日本電気協会

原子力規格委員会

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JEAC4626-2021
原子力発電所の火災防護規程

概 要

 本規程は,原子力発電所において,火災の発生,延焼等の影響を受けることにより,原子炉の安全性を損なうことのないよう,適切な防護措置を施すために,設計上考慮する事項について規定している。
 JEAC4626-2010「原子力発電所の火災防護規程」の改定にあたり,「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」の具体的な要求事項と,原子力発電所での実際の適合状況を反映している。

目 次

1. 総 則
1.1 一般
1.2 適用範囲
1.3 関連法規
1.4 用語の定義

2. 火災防護の基本事項
2.1 火災防護を行う機器等の選定
2.2 火災防護対象機器の選定
2.3 火災区域及び火災区画の設定

3. 火災発生の防止
3.1 不燃性,難燃性材料の使用
3.1.1 不燃性,難燃性材料
3.1.1.1 不燃性材料,難燃性材料
3.1.1.2 代替材料
3.1.1.3 不燃性材料,難燃性材料及び代替材料が使用できない場合の措置
3.2 発火性,引火性物質の対策
3.2.1 発火性又は引火性液体の対策
3.2.1.1 漏えい防止策
3.2.1.2 漏えいの拡大防止
3.2.1.3 配置上の考慮
3.2.1.4 換 気
3.2.1.5 防 爆
3.2.1.6 貯 蔵(集積)
3.2.2 発火性又は引火性気体の対策
3.2.2.1 漏えい防止策
3.2.2.2 配置上の考慮
3.2.2.3 換 気
3.2.2.4 防 爆
3.2.2.5 貯 蔵(集積)
3.2.2.6 放射線分解に伴う水素の対策
3.2.3 発火性又は引火性固体の対策
3.2.3.1 配置上の考慮
3.2.3.2 貯 蔵(集積)
3.3 可燃性の蒸気又は微粉の滞留防止の対策
3.3.1 換 気
3.3.2 静電気の除去
3.4 発火源となる設備の対策
3.5 電気設備の過電流による過熱防止の対策
3.6 自然現象による火災発生防止
3.6.1 避雷設備
3.6.2 耐震設計

4. 火災の感知及び消火
4.1 火災感知設備及び消火設備
4.1.1 火災感知設備
4.1.1.1 火災感知器設置対象区域
4.1.1.2 火災感知器設置要領
4.1.1.3 火災感知設備の電源
4.1.1.4 受信機等
4.1.2 消火設備
4.1.2.1 消火設備と設置対象区域
4.1.2.2 消火設備設置要領
4.1.2.3 消火用水供給系
4.1.3 機器類の規格
4.1.4 その他
4.2 消火設備の破損・誤動作及び誤操作対策
4.2.1 地震時の破損対策
4.2.2 誤動作及び誤操作対策
4.3 自然現象に対する火災感知設備及び消火設備の性能維持
4.3.1 耐震設計
4.3.2 凍結防止
4.3.3 台 風

5. 火災の影響の軽減
5.1 火災の影響の軽減
5.2 軽減対策
5.3 原子炉の安全確保

6. 個別の火災区域又は火災区画における留意事項

解 説
1. 総 則
1-1 一 般
2. 火災防護の基本事項
2-1 「火災防護を行う機器等」から除外する機器
2-2 一定の距離
3. 火災発生の防止
3-1 主要な構造材
3-2 難燃ケーブル
3-3 建 屋 内
3-4 保 温 材
3-5 蓄電池室の換気量
3-6 放射線分解に伴う水素の対策
3-7 電気設備の過電流による過熱防止の対策
3-8 落雷,地震等の自然現象
3-9 避 雷 設 備
4. 火災の感知及び消火
4-1 火災による悪影響を受ける可能性がない場合
4-2 固有の信号を発する異なる種類の感知器
4-3 火災感知設備の非常用電源
4-4 固定式消火設備
4-5 煙充満により消火活動が困難とならない火災区域又は火災区画
4-6 化学消防自動車
4-7 十分な泡消火薬剤の量及び貯水量
4-8 ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制
4-9 系統分離に応じた独立性を備える
4-10 消火活動に十分対応できる容量
4-11 検定対象外の機械器具等を用いる場合
4-12 地震時においても大きな被害を受けることのない場所
4-13 耐震性を考慮した設計
4-14 地震等の自然現象によっても,火災感知及び消火の機能,性能が維持
4-15 火災防護を行う機器等の耐震クラスに応じて,機能を維持
4-16 複数同時火災の発生に留意
4-17 耐震強度及び耐震構造の考慮
4-18 格納施設等
4-19 防災拠点施設に求められる程度の耐震性
4-20 現場へのアクセス
5. 火災の影響の軽減
5-1 他の火災区域から分離
5-2 3 時間以上の耐火能力を有する耐火壁
5-3 互いの系列間が3 時間以上の耐火能力を有する隔壁等
5-4 互いの系列間の水平距離が6m 以上
5-5 互いの系列間が1 時間以上の耐火能力を有する隔壁等
5-6 耐火壁及び隔壁
5-7 系統分離に用いる感知・消火設備
5-8 原子炉の安全停止に係る安全機能を有する構築物,系統及び機器に関連
する非安全系のケーブルとの系統分離
5-9 煙を処理できる設計
5-10 原子炉の安全確保
5-11 安全停止できる
5-12 火災影響評価
6. 個別の火災区域又は火災区画における留意事項
6-1 幅0.9m ,高さ1.5m の通路

図表

巻頭言

 我が国においては,1965年6月「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」(通商産業省令第62号)が制定され,原子力発電所の火災防護対策に関し,1975年12月に同省令に第4条の2「火災による損傷の防止」を追加し公布されました。その後,1977年6月「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」に設計上考慮すべき事項が追加された後,1980年11月「発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」が定められ,国としての規制体系が整備されました。そして(社)日本電気協会は,通商産業省から,より定量的かつ具体的な火災防護の設計・評価のための指針を整備するように調査・検討を依頼され,原子力専門委員会(現原子力規格委員会)安全設計分科会の下に火災防護検討会を設置して検討を行い,1985年に「原子力発電所の火災防護指針」(JEAG4607)(初版)を制定しました。
 その後,1990年8月に原子力安全委員会は,「発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」を改訂し,1992年にはIAEA安全指針「原子力発電所の火災防護」が改訂されました。本協会は,内外での状況変化や技術進歩に対応するためJEAG4607の内容を見直し,1999年にJEAG4607-1999を発行しました。
 一方で,原子力安全・保安院は,国内原子力発電所の安全審査に用いる技術基準として学協会規格を活用するため,2005年12月に「安全設計分野及び放射線管理分野における日本電気協会規格に関する技術評価書」を取りまとめました。その技術評価書で「原子力発電所の火災防護指針」(JEAG4607-1999)は,技術基準として是認(エンドース)され,その適用に当たっての条件と課題が示されました。
 2007年7月16日の新潟県中越沖地震では,原子力発電所の屋外変圧器が地震による損傷で油火災が発生しました。この事態を重視して,2007年12月に「発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」の一部改訂,2008年6月に「原子炉施設を設置した工場又は事業所における初期消火活動のための体制の整備に関する規程の解釈(内規)」が制定され,2008年10月には「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令の解釈について」が一部改正されました。
 このような新潟県中越沖地震後の,国の規制機関による火災防護対策強化への動きを受けて,本協会におけるJEACとJEAGの定義を踏まえて,2010年3月に,JEACとJEAGの2本立てとして制定,改定しました。本原子力発電所の火災防護に関わる本規程JEACと指針JEAGの2本立ての構成については,目次の前にページを設けて説明しておりますので参照下さい。
 本規程においては,国の火災防護に対する規制上の多岐にわたる要求事項を原子力発電事業者の観点から明確化することを目的にJEACとして制定しています。
 その後,東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機とした新規制基準下で,2013年6月に「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」が制定され,火災発生防止,火災の感知・消火,火災の影響軽減の各火災防護の3方策を独立して要求する等,原子炉施設の火災防護に関する要求が高まりました。今回の改定では,この具体的な要求事項と,原子力発電所での実際の適合状況を反映しました。
 制定された審査基準を踏まえた改定作業は,2018年1月の検討開始から火災防護検討会,安全設計分科会,原子力規格委員会の各段階で貴重なご意見・議論の反復を重ね約3年半の歳月を要しました。
 原子力の安全には終わりはなく,火災防護においても,基準で求められるものに留まることなく,常により高いレベルを目指し続けていく必要があります。また,設計と運用の両者が両輪となって機能することが重要です。本協会においては,今後も火災防護対策のハードとソフト両面での改善に資するべく,本規程の継続的検討を進めていく所存です。
 最後に,本規程の改定に当たって,関係官庁,電力会社,メーカー並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝する次第であります。

2021年9月

原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 古田一雄

改定履歴
制  定
2010年3月15日
第1回改定
2021年9月15日
正誤表
公衆審査
JEAC4626-2021
期間:2021年7月16日
    〜2021年9月15日
結果:資料請求者0名
意見送付者0名
質疑・意見対応
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