日本電気協会

原子力規格委員会

サイトトップ

報告書「原子力規制庁から示された課題(2022 年 6 月 8 日)に対する考え方」
の公表に当たって


1.はじめに
 今回の報告書の公表は,JEAC4111-2021 の普及及び活用促進を目的とし,原子力規制庁から示された課題に対する検討において明らかになった改善点,それを踏まえた今後の普及・促進活動及び次回改定に向けた取り組みを,事業者をはじめ広く関心のある方々にご理解頂くためのものです。

2.経緯
 国が品質保証に関する要求事項を定め,事業者はこれを満たすシステムを構築し,運用・改善を図るという枠組みの下,2003 年に,JEAC 4111 を制定してから約 20 年が経過しました。この間,2011 年の福島第一原子力発電所事故の反省と,その教訓を踏まえて 2013 年に改定を行い,2021 年の改定では,国内外の最新知見を反映するとともに,新たな検査制度の前提となる「事業者の自主的安全性向上の取組」を促進するために,要求事項に加えて具体的な適用ガイドを提示しました。
 JEAC4111-2021 は,事業者が,原子力施設(加工施設,再処理施設,発電用原子炉施設,使用済燃料貯蔵施設,廃棄物埋設施設及び廃棄物管理施設)の設計・建設段階から廃止措置段階において,原子力安全のためのマネジメントを実施する際に守るべき要求事項と適用ガイドラインを定めた規格であり,その内容から,原子力安全に係わる多くの民間規格に対して傘となる性格を持つ規格です。また,IAEA の GSR Part 2,米国の検査制度及びその運営経験等が反映された国が定めた品質保証に関する要求事項を満たすよう具体化を図っています。
 品質保証分科会は,JEAC4111-2021 を 2021 年 5 月に発刊して以降,関係箇所と協力して,JEAC 4111 が原子力安全の確保に向けてその役割を果たしていけるよう取り組んできました。そのような中,2022 年 6 月 8 日の原子力規制庁との面談において,原子力規制庁より JEAC4111 を規制活動又は事業者の保安活動に適用するための4つの課題が示されました注1)。このため,品質保証分科会では JEAC 4111 適用課題検討タスクを 2022 年 7 月 25 日に設置し,鋭意検討を重ねてきました注2)。今回公開する報告書「原子力規制庁から示された課題(2022 年 6 月 8 日)に対する考え方」(添付資料②及び⑧を除く注3))及びその概要版は,その検討結果をまとめたものです。

3.課題に対する考え方
 原子力規制庁から示された 4 つの課題に対する考え方は,報告書及びその概要版に示した通りです。これらの課題の根底には,規制で用いられている固有の用語・表現と民間規格で用いられている用語・表現とが異なっていることがあります。このため,規制の要求事項,及び JEAC4111 の要求事項・適用ガイドの解釈において,規制機関,民間規格の制定者,及び民間規格を活用する事業者の間で認識の齟齬が生じる可能性があります。したがって,規制で用いられている固有の用語・表現については,その内容を民間規格の用語・表現を使って規定することを基本としながら,読み替えにおける誤解が生じないようにすることが必要です。
 特に,パフォーマンス重視,及び「実効性の維持」と「有効性の継続的改善」との関係については,マネジメントシステムの確立及び運用において意図した結果を達成する蓋然性の高いものにする(実効性を維持できるものにする)ことを共通の認識とすることが重要です。このためには,以下のような誤解のされやすい点を明確にし,技術資料等をベースに講習会等で説明し理解を確実なものにしていくとともに,より積極的な形で情報を発信していくこと,次回改定においてはこれらに配慮した記載を工夫することが必要です。
 1)リスク情報を活用し,意図した結果を達成できるという確信を与えることができるようにすることが重要なこと。
 2)意図した結果が達成できない又はできないおそれがある場合には,リスク情報を活用して業務の目的を達成できる蓋然性の高い計画を立案し,計画どおりに業務を実施するというプロセスにおいて何が不足していたのかを検討することで,パフォーマンスが確実に改善されるようにすることが重要なこと。
 以上のような対処に加えて,国内外の最新知見を取り込み,規制の要求事項を確実に満たし,利害関係者の期待を考慮した事業者の自主的な取り組みを促進できるよう,内容を充実・発展させていくことが必要と考えます。

4.今後の取り組み
 品質保証分科会は,3.で述べた考え方をふまえ,今後,以下のことに取り組みます。
(1) JEAC4111 の次回改定については,報告書「原子力規制庁から示された課題(2022 年6 月 8 日)に対する考え方」をインプット資料の一つとし,中期的な視点で取り組む。
(2) 報告書「原子力規制庁から示された課題(2022 年 6 月 8 日)に対する考え方」をもとに JEAC4111 において誤解の生じやすい点を明確にし,講習会資料に反映させる。
(3) 報告書「原子力規制庁から示された課題(2022 年 6 月 8 日)に対する考え方」の中の品管規則と JEAC4111 の比較表等を規約に基づく正式の技術資料の扱いとし,それをベースに講習会等で説明し理解を確実なものにしていく。

注1)原子力規制庁から示された4つの課題については、原子力規制庁のホームページに、「被規制者等及びノーリターンルール対象組織等との面談記録(原子力の規制)」、「規制基準等に関するもの」、令和 4 年 06 月 08 日、原子力安全のためのマネジメントシステム規程(JEAC4111)に係る日本電気協会との面談」(資料 2 JEAC4111-2021 の課題について)として掲載されています。なお、同ページに掲載されている資料1は、面談要望時のものであり、面談に至る関連情報が記載されています。
   「JEAC4111-2021 の課題について」
注2)品質保証分科会の議事録は、原子力規格委員会(NUSC)のホームページに掲載されています。
議事録: ここを参照
注3)添付資料②及び⑧は,著作権などの関係で省略しています。NUSC の事務局に請求することにより入手できます。

   「原子力規制庁から示された課題(2022年6月8日)に対する考え方(概要版)」
   「原子力規制庁から示された課題(2022年6月8日)に対する考え方」(完本版)

2023 年 9 月 27 日
原子力規格委員会
品質保証分科会

ページのトップへ