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本規程は,原子力発電所の事業者(以下,「組織」という。)が実施する原子力安全のためのマネジメントシステムに基づく活動のうち,保守管理の計画,実施,評価及び改善などの活動を通じて,発電用原子炉施設の安全性,電力の供給信頼性を確保するために,原子力発電施設の供用期間中に組織が実施するべき保守管理(「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則(昭和53年通商産業省令第77号)」の改正により,供用開始前の設計及び工事から供用開始後の保守管理までの一連が施設管理として定義されたことに伴い,本規程では,「JEAC4111-2021 原子力安全のためのマネジメントシステム規程」により規定する設計管理を除いた施設管理のプロセスを,保守管理のプロセスの対象範囲とした。)の基本要件を定めるものである。
第1章 序 論
第2章 要求事項
MC-1 目 的
MC-2 適用範囲
MC-3 用語の定義
MC-4 保守管理
MC-5 保守管理の実施方針及び保守管理目標
MC-6 保全プログラムの策定
MC-7 保全対象範囲の策定
MC-8 保全重要度の設定
MC-9 保全活動管理指標の設定及び監視計画の策定
MC-10 保全活動管理指標の監視
MC-11 保全計画の策定
MC-11-1 点検計画の策定
MC-11-1-1 保全方式の選定
MC-11-1-2 保全方式ごとの点検計画の内容
MC-11-2 補修,取替え及び改造計画の策定
MC-11-3 特別な保全計画の策定
MC-12 保全の実施
MC-13 点検・補修等の結果の確認・評価
MC-14 点検・補修等の不適合管理及び是正処置
MC-15 保全の有効性評価
MC-16 保守管理の有効性評価
解 説
原子力発電所の安全性と信頼性を確保し,効率を維持するためには,原子力発電所を構成する構築物,系統及び機器が所定の機能を発揮しうる状態にあるよう事業者が保守管理することが必要です。本規程は,この観点から,原子力発電所の供用期間中に実施すべき保守管理活動の基本要件を定めるものです。
本規程は,保守管理全般にわたって事業者が遵守すべき基本要件を,前身である「点検指針」を基に2003年に規程化したもので,2007年及び2014年の改定を経て現在まで,現場での保全活動をはじめ「定期事業者検査」や「定期安全管理審査」等のよりどころとして,原子力発電所の保守管理に携わる方々に広く利用されてきました。
2016年の改定では,新規制基準の適用により重大事故等対処設備(SA設備)が導入されたことに伴い,保全対象範囲の明確化など保全に係る基本的な考え方を示すとともに,海外規格等の調査結果を踏まえて,リスク情報を保全活動において積極的に活用する観点からの反映を行いました。
今回は,2017年4月の「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)」の改正により,従来の検査制度が改められ,リスクを活用した実績重視の考え方を取り入れ,原子炉施設の安全性を監視・評価する米国の原子炉監督プロセスを参考とした原子力規制検査制度が導入されることに伴い,必要となる改定を行いました。保守管理に係る新たな検査制度のポイントは以下であり,これらを反映することにより,適切かつ効果的な保守管理活動が実施されるものと期待します。
・事業者検査化:これまで国が実施していた検査(施設定期検査,使用前検査等)を
事業者責任で実施
・自主的安全性向上に向けた取組み:事業者が継続的な安全性向上を図るために
リスク情報を活用して,より安全性にフォーカスした保安活動への改善を実施
また,「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則(昭和53年通商産業省令第77号)」(以下,「実用炉規則」という。)の改正により,供用開始前の設計及び工事から供用開始後の保守管理までの一連が施設管理として定義されたことに伴い,本規程では,「原子力安全のためのマネジメントシステム規程」(JEAC4111-2021)により規定する設計管理を除いた施設管理のプロセスを,保守管理のプロセスの対象範囲としております。
最後に本規程改定に当たり絶大なご尽力を頂きました検討会,分科会の委員各位及び事務局を始めとした関係各位に深く感謝する次第です。
2021年1月
原子力規格委員会
運転・保守分科会
分科会長 山口 彰