JEAC4601は2008年版の発刊後、新規制基準を踏まえて2015年版を発刊した。日本電気協会では、2015年版で実施した改定を踏まえて最新の規格の使用を推奨している。ただし、改定版を出すことにより旧版の使用を妨げるものではない。2015年版発刊に伴う検討作業の過程で、2008年版において誤記や技術的な混乱を使用者に与えるおそれのある箇所が確認された。これらについては2015年版で修正したものの、2008年版を使い続けられる使用者が存在することに配慮し、平成22年6月2日付で発行している正誤表に加え、今回新たに正誤表をまとめ、追加発行することとする。
平成29年6月
耐震設計分科会長
原 文雄
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(平成18年9月9日 原子力安全委員会)に基づき,原子炉施設の耐震設計に対して要求する技術的仕様を定めたものであり,これまでの指針をあらたに規程として制定したものである。本技術規程と「原子力発電所耐震設計技術指針」JEAG4601-2008は一体で運用されるものであるとともに,当面の間はJEAG4601-1984,JEAG4601-1987及びJEAG4601-1991についても平行して適用・運用していく。これらの指針・規程を平行して用いる場合には,両者の記載事項の関係について十分な理解と吟味が必要である。
第1章 基本事項
1.1 適用
1.1.1 適用範囲
1.1.2 改定
1.1.3 適用する年版
1.1.4 関連する規格等
1.2 耐震設計の基本方針
1.2.1 耐震設計の目的
1.2.2 基本的考え方
1.2.3 耐震設計に適用する地震動
1.3 用語と略称
1.3.1 用語
1.3.2 略称
1.4 単位系
第2章 耐震重要度分類
2.1 機能上の分類
2.2 耐震クラス別施設
2.3 耐震重要度分類の適用
2.4 耐震重要度と地震力
附属書2.1 各設備の具体的な耐震重要度分類
附属書2.2 地震時又は地震後に動的機能が要求される設備
第3章 建物・構築物の耐震設計
3.1 基本事項
3.1.1 適用範囲
3.1.2 準用する法令・規準類
3.1.3 用語の定義
3.1.4 耐震設計の基本方針
3.1.4.1 基本的な方針
3.1.4.2 設計の基本方針
3.1.4.3 地震力の算定
3.1.4.4 弾性設計用地震動Sd
3.2 材料,材料定数及び材料の許容応力度
3.2.1 材料
3.2.2 材料定数
3.2.3 材料の許容応力度等
3.3 荷重,荷重の組合せ及び許容限界
3.3.1 荷重
3.3.2 設計に用いる地震力
3.3.3 荷重の組合せと許容限界
3.4 応力解析と断面設計
3.4.1 応力解析
3.4.2 断面設計
3.5 地震応答解析
3.5.1 地震応答解析の基本事項
3.5.2 地震応答解析に用いる地盤の物性値
3.5.3 地盤の地震応答解析
3.5.4 建物・構築物のモデル化
3.5.5 地盤-建物・構築物動的相互作用の評価法
3.5.5.1 地盤のモデル化方法
3.5.5.2 地盤ばねモデル
3.5.5.3 離散系モデル
3.5.5.4 基礎浮き上がりの評価法
3.5.6 建物・構築物の復元力特性の評価法
3.5.6.1 鉄筋コンクリート造耐震壁の復元力特性の評価法
3.5.6.2 鉄骨架構の復元力特性の評価法
3.6 耐震安全性の確認
3.6.1 基準地震動Ss に対する検討
3.6.1.1 鉄筋コンクリート造耐震壁の評価
3.6.1.2 鉄骨架構の評価
3.6.1.3 基礎の接地圧の評価
3.6.2 弾性設計用地震動Sd 及び静的地震力に対する検討
3.6.2.1 建物・構築物の評価
3.6.2.2 基礎の接地圧の評価
3.6.3 保有水平耐力の検討
3.6.4 機能保持及び波及的影響防止の検討
3.6.4.1 機能保持の検討
3.6.4.2 波及的影響防止の検討
参考文献
附属書
附属書 3.1 地下壁に作用する土圧の評価法
附属書 3.2 プールの動水圧の評価法
附属書 3.3 静的地震力の評価法
附属書 3.4 地盤ばねモデル
附属書 3.5 離散系モデル
附属書 3.6 基礎浮き上がりの評価法
附属書 3.7 鉄筋コンクリート造耐震壁の復元力特性の評価法
附属書 3.8 鉄骨架構の復元力特性の評価法
参考資料
第4章 機器・配管系の耐震設計
4.1 基本事項
4.1.1 適用範囲
4.1.2 準用する規準類
4.1.3 機器・配管系の耐震設計の基本方針
4.1.3.1 地震時に確保すべき安全状態
4.1.3.2 基本的な方針
4.1.3.3 弾性設計用地震動Sd
4.1.4 用語と略称
4.1.5 一般事項
4.1.5.1 機器・配管系の設備の区分
4.1.5.2 機器と支持構造物の境界
4.1.5.3 プラントの運転状態
4.1.5.4 プラントの供用状態
4.2 荷重の組合せと許容限界
4.2.1 基本方針
4.2.1.1 基本的考え方
4.2.1.2 記号の説明
4.2.2 荷重の組合せ
4.2.2.1 地震荷重と組み合わせる運転状態
4.2.2.2 荷重の組合せと供用状態
4.2.2.3 運転状態と地震動の組合せに対応する供用状態
4.2.3 地震力が加わる場合の許容応力
4.2.3.1 S クラス施設の許容応力
4.2.3.2 B クラス及びC クラス施設の許容応力
4.2.3.3 制御棒及び燃料集合体の許容基準
4.2.4 耐震設計に適用する材料強度
4.3 設計用地震力
4.3.1 耐震重要度分類と設計用地震力
4.3.2 水平地震力と鉛直地震力による荷重の組み合せ法
4.3.2.1 動的地震力における組み合わせ
4.3.2.2 静的地震力における組み合わせ
4.4 地震応答解析
4.4.1 一般事項
4.4.2 地震応答解析法
4.4.3 床応答スペクトル
4.4.4 地震応答解析モデル
4.4.5 設計用減衰定数
4.5 強度評価
4.5.1 一般事項
4.5.2 強度評価法
4.6 動的機器の地震時機能維持評価
4.6.1 適用範囲
4.6.2 地震時機能維持が要求される機器
4.6.3 機能維持評価法
4.6.3.1 一般的原則
4.6.3.2 試験による評価の方法
4.6.3.3 解析による評価の方法
4.7 電気計装機器の耐震設計
4.7.1 適用範囲
4.7.2 強度評価
4.7.3 地震時機能維持が要求される電気計装機器
4.7.4 機能維持評価法
4.8 機器・配管系支持構造物のエネルギ吸収を利用した耐震設計
4.8.1 一般事項
4.8.2 用語の定義
4.8.3 架構レストレイントの弾塑性を利用した配管系設計法
4.8.3.1 適用範囲
4.8.3.2 用語の定義
4.8.3.3 設計の基本方針
4.8.3.4 許容限界
4.8.3.5 品質管理
4.8.4 配管に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
4.8.4.1 適用範囲
4.8.4.2 用語の定義
4.8.4.3 設計の基本方針
4.8.4.4 許容限界
4.8.4.5 品質管理
4.8.5 機器に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
4.8.5.1 適用範囲
4.8.5.2 用語の定義
4.8.5.3 設計の基本方針
4.8.5.4 許容限界
4.8.5.5 品質管理
附属書4.1 機器・配管系の耐震設計に適用する許容応力値
附属書4.2 機器・配管系の静的地震力
附属書4.3 機器・配管系の耐震強度評価法
附属書4.4 動的機器の地震時機能維持評価法
附属書4.5 電気計装機器の地震時機能維持評価法
附属書4.6 架構レストレイントの弾塑性を利用した配管系設計法
附属書4.7 配管に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
附属書4.8 機器に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
参考文献
参考資料
第5章 屋外重要土木構造物の耐震設計
5.1 基本事項
5.1.1 適用範囲
5.1.2 準用する規準類
5.2 屋外重要土木構造物の耐震設計の手順
5.3 屋外重要土木構造物の設計条件
5.3.1 設計用地震力
5.3.2 考慮すべき荷重
5.3.3 材料特性
5.4 屋外重要土木構造物周辺地盤の検討
5.4.1 構造物周辺地盤のすべり
5.4.2 構造物周辺地盤の液状化
5.5 屋外重要土木構造物の詳細設計に用いる解析手法
5.5.1 解析手法の要件
5.5.2 動的解析法
5.5.3 液状化による地盤の流動影響の検討
5.6 屋外重要土木構造物の安全性評価
5.6.1 安全性評価の考え方
5.6.2 許容応力度法による照査
5.6.3 限界状態設計法による照査
附属書5.1 地盤の流動影響の検討
附属書5.2 曲げ耐力の評価式
附属書5.3 せん断耐力の評価式
附属書5.4 曲げ系破壊に対する限界状態
参考文献
参考資料
原子力発電所の耐震設計技術については,「原子力発電所耐震設計指針」(JEAG4601-2008)の"「原子力発電所耐震設計指針」について"で述べたような経緯を経て,本規程JEAC4601は下記のように指針JEAG4601から分離制定された。「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日原子力安全委員会決定)」(以下,「耐震審査指針(1981)」という)に適合するものとして,原子力発電所耐震設計技術指針許容応力・重要度分類編」(JEAG4601-1984),「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針追補版」(JEAG4601-1991)において,その全般が規定されている。このうち,許容応力編はASME Pressure Vessel and Piping Sec.Ⅲの設定,通産省告示501号の制定を受けて,1960年代より改定作業を行った結果を考慮して制定された。
その後,耐震審査指針(1981)は,1995年兵庫県南部地震の経験に基づき耐震技術に関する最新の知見を取り入れるよう高度化の検討がなされ,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(平成18年9月19日 原子力安全委員会決定)(以下,「耐震審査指針(2006)」という)として改訂された。
耐震審査指針(2006)の改定を受け,今日までの耐震設計に関する技術指針「原子力発電所耐震設計技術指針許容応力・重要度分類編」(JEAG4601-1984),「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針追補版」(JEAG460-1991)を一本化するとともに,建物・構築物,機器・配管系及び土木構造物の耐震設計に関する内容について,耐震審査指針(2006)に適合するよう見直し,また今日までの審査実績や最新の知見を取り入れて,「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2008)として制定した。
一方,耐震審査指針(2006)の改訂を受け諸般の作業の進行の便宜のため,先行発刊した「原子力発電所耐震設計技術指針基準地震動策定・地質調査編」(JEAG4601-2007)についても「基礎地盤の安定性評価及び周辺斜面の安定性評価」及び「津波水位評価」等自然現象を扱う事項に関する内容を充実し「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2008)として改定版が発刊された。本規程はこれらとは一体で運用されるものであり,いずれの指針・規程を用いる場合には,両者の記載事項の関係について十分な理解が必要である。
制定に当たっては耐震審査指針(2006)に適合させるべく,最新知見を取り入れた規程としての作業を進めてきたが,制定途中で発生した2007年新潟県中越沖地震については現在解明中であり技術指針及び本規程の中には反映していない。新潟県中越沖地震において得られた耐震設計に関する新たな知見については今後速やかに反映していく。
また,今回制定した「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2008)と「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2008)は一体で運用されるものであるとともに当面の間は「原子力発電所耐震設計技術指針許容応力・重要度分類編」(JEAG4601-1984),「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針追補版」(JEAG4601-1991)についても平行して適用・運用していく。これらの各指針・規程を平行して用いる場合には,両者の記載事項の関係について十分な理解と吟味が必要である。
なお,耐震設計に関する最新の知見を反映するとしているが,今後得られる新たな知見や設計経験の蓄積に応じ発行時点までの技術についても,その時々で積極的に導入していくことが重要であることから,この点は特に留意する必要がある。
言うまでも無く,耐震設計の適否は,実際の地震に遭遇してはじめて,明確になるものであるが,本技術規程はその基本を示すもので,その解釈,運用については,使用者の格段の配慮を期待するものである。
最後に,原子力規格委員会,耐震設計分科会及び各検討会等審議に参加してご協力いただいた関係各委員の方々及び関係諸機関の方々,そして特にご尽力いただいた原案作成者,検討会幹事の方々に厚くお礼申し上げる。
平成20年12月
原子力規格委員会
耐震設計分科会
分科会長 柴田 碧