「原子力発電所の耐震設計に関する事項のうち,基本事項,耐震重要度分類,建物・構築物の耐震設計,機器・配管系の耐震設計、並びに屋外重要土木構造物の耐震設計に関する事項をまとめたものである。本技術規程と「原子力発電所耐震設計技術指針」JEAG4601-2015を併用する場合には,両者の記載事項の関係について十分な吟味が必要である。
第1章 基本事項
1.1 適用
1.1.1 適用範囲
1.1.2 改定
1.1.3 適用する年版
1.1.4 関連する規格等
1.2 耐震設計の基本方針
1.2.1 耐震設計の目的
1.2.2 基本的考え方
1.2.3 耐震設計に適用する地震動
1.3 用語と略称
1.3.1 用語
1.3.2 略称
1.4 単位系
第2章 耐震重要度分類
2.1 機能上の分類
2.1 機能上の分類
2.2 耐震クラス別施設
2.3 耐震重要度分類の適用
2.4 耐震重要度と地震力
附属書 2.1 各設備の具体的な耐震重要度分類
附属書 2.2 地震時又は地震後に動的機能が要求される設備
第3章 建物・構築物の耐震設計
3.1 基本事項
3.1 基本事項
3.1.1 適用範囲
3.1.2 準用する法令・規準類
3.1.3 用語の定義
3.1.4 耐震設計の基本方針
3.2 材料,材料定数及び材料の許容応力度
3.2.1 材料
3.2.2 材料定数
3.2.3 材料の許容応力度等
3.3 荷重,荷重の組合せ及び許容限界
3.3.1 荷重
3.3.2 設計に用いる地震力
3.3.3 荷重の組合せと許容限界
3.4 応力解析と断面設計
3.4.1 応力解析
3.4.2 断面設計
3.5 地震応答解析
3.5.1 地震応答解析の基本事項
3.5.2 地震応答解析に用いる地盤の物性値
3.5.3 地盤の地震応答解析
3.5.4 建物・構築物のモデル化
3.5.5 地盤-建物・構築物動的相互作用の評価法
3.5.6 建物・構築物の復元力特性の評価法
3.6 耐震安全性の確認
3.6.1 基準地震動Ssに対する検討
3.6.2 弾性設計用地震動Sd及び静的地震力に対する検討
3.6.3 保有水平耐力の検討
3.6.4 機能維持及び波及的影響防止の検討
参考文献
附属書 3.1 地下壁に作用する土圧の評価法
附属書 3.2 プールの動水圧の評価法
附属書 3.3 静的地震力の評価法
附属書 3.4 地盤ばねモデル
附属書 3.5 離散系モデル
附属書 3.6 基礎浮き上がりの評価法
附属書 3.7 鉄筋コンクリート造耐震壁の復元力特性の評価法
附属書 3.8 鉄骨架構の復元力特性の評価法
参考資料 3.1 温度荷重に対する設計の考え方
参考資料 3.2 弾性波試験と地盤の弾性定数について
参考資料 3.3 地盤の地震応答解析における等価線形解析について
参考資料 3.4 建物・構築物の鉛直地震応答解析モデルについて
参考資料 3.5 基礎浮き上がり解析手法について
参考資料 3.6 埋め込みを考慮した基礎浮き上がり評価モデルについて
参考資料 3.7 安全機能限界と弾性限界に対応する入力荷重の比率の試算例
参考資料 3.8 床スラブの復元力特性について
参考資料 3.9 屋根トラスの耐震性評価モデルについて
第4章 機器・配管系の耐震設計
4.1 基本事項
4.1 基本事項
4.1.1 適用範囲
4.1.2 準用する基準類
4.1.3 機器・配管系の耐震設計の基本方針
4.1.4 用語と略称
4.1.5 一般事項
4.2 荷重の組合せと許容限界
4.2.1 基本方針
4.2.2 荷重の組合せ
4.2.3 地震力が加わる場合の許容応力
4.2.4 耐震設計に適用する材料強度
4.3 設計用地震力
4.3.1 耐震重要度分類と設計用地震力
4.3.2 水平地震力と鉛直地震力による荷重の組合せ法
4.4 地震応答解析
4.4.1 一般事項
4.4.2 地震応答解析法
4.4.3 床応答スペクトル
4.4.4 地震応答解析モデル
4.4.5 設計用減衰定数
4.5 強度評価
4.5.1 一般事項
4.5.2 強度評価法
4.6 動的機器の地震時機能維持評価
4.6.1 適用範囲
4.6.2 地震時機能維持が要求される機器
4.6.3 機能維持評価法
4.7 電気計装機器の耐震設計
4.7.1 一般事項
4.7.2 強度評価
4.7.3 地震時機能維持が要求される電気計装機器
4.7.4 機能維持評価法
4.8 機器・配管系支持構造物のエネルギ吸収を利用した耐震設計
4.8.1 一般事項
4.8.2 用語
4.8.3 架構レストレイントの弾塑性を利用した配管系設計法
4.8.4 配管に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
4.8.5 機器に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
附属書4.1 機器・配管系の耐震設計に適用する許容応力値
附属書4.2 機器・配管系の静的地震力
附属書4.3 機器・配管系の耐震強度評価法
附属書4.4 動的機器の地震時機能維持評価法
附属書4.5 電気計装機器の地震時機能維持評価法
附属書4.6 架構レストレイントの弾塑性を利用した配管系設計法
附属書4.7 配管に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
附属書4.8 機器に制振サポートを用いた場合の機器・配管系設計法
参考文献
参考資料
第5章 屋外重要土木構造物他の耐震設計
4.1 基本事項
5.1 基本事項
5.1.1 適用範囲
5.1.2 準用する法令・規準類
5.2 屋外重要土木構造物の耐震設計の手順
5.3 屋外重要土木構造物の設計条件
5.3.1 設計用地震力
5.3.2 考慮すべき荷重
5.3.3 材料特性
5.4 屋外重要土木構造物基礎地盤及び周辺地盤の検討
5.4.1 構造物基礎地盤の支持性能
5.4.2 構造物基礎地盤及び周辺地盤のすべり
5.4.3 構造物基礎地盤及び周辺地盤の液状化
5.5 屋外重要土木構造物の詳細設計に用いる解析手法
5.5.1 解析手法
5.5.2 動的解析
5.5.3 液状化の検討
5.6 屋外重要土木構造物の安全性評価
5.6.1 安全性評価の考え方
5.6.2 許容応力度法による照査
5.6.3 限界状態設計法による照査
5.7 津波防護施設の耐震設計
5.7.1 適用範囲
5.7.2 準用する規準類
5.7.3 津波防護施設の設計条件
5.7.4 津波防護施設の基礎地盤及び周辺地盤の検討
5.7.5 津波防護施設の設計に用いる解析手法
5.7.6 津波防護施設の安全性評価
附属書 5.1 地盤の流動影響の検討
附属書 5.2 曲げ耐力の評価式
附属書 5.3 せん断耐力の評価式
附属書 5.4 限界層間変形角の評価式
参考文献
参考資料 5.1 全応力解析の適用性について
参考資料 5.2 有効応力解析の適用性について
参考資料 5.3 水平地震動と鉛直地震動の重ね合わせ
原子力発電所の耐震設計技術については,その基礎がまとめられ JEAG4601の1970年版として初めて出版された。その後,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日 原子力安全委員会決定)」(以下,「耐震審査指針(1981)」という)を踏まえて,「原子力発電所耐震設計技術指針 重要度分類・許容応力編」(JEAG4601-1984),「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針追補版」(JEAG4601-1991)が発刊された。
耐震審査指針(1981)は,1995年兵庫県南部地震の経験に基づき耐震技術に関する最新の知見を取り入れて,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(平成18年9月19日 原子力安全委員会決定)」(以下,「耐震審査指針(2006)」という)として改訂された。この耐震審査指針(2006)の改訂を受け,「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601)の改定に着手されたが,諸般の作業の進行の便宜のため,基準地震動の策定並びに地質調査について,それらの関連分野の最新の知見を取り入れて,「原子力発電所耐震設計技術指針 基準地震動策定・地質調査編」(JEAG4601-2007)として先行発刊された。その後,「基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価」と「津波水位評価」をこれに加えて,「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2008)が改定発刊された。
一方「原子力発電所耐震設計技術指針 重要度分類・許容応力編」(JEAG4601-1984), 「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針追補版」(JEAG4601-1991)のうち施設の耐震設計に係わる部分について一体化するとともに,耐震審査指針(2006)に適合するように見直し、最新の知見を取り入れて、「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2008)として制定された。この時点で,耐震設計技術のうち,設計条件となる自然現象に係わるものを指針(JEAG)として,また,施設の設計に係わるものを規程(JEAC)として整理しまとめられた。
JEAC(G)4601-2008 の改定に当たっては, 2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で得られた知見や,その後の研究で得られた設計技術の知見等を踏まえた改定作業を進めていたが,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波によって,東京電力㈱福島第一原子力発電所が被災したのを契機に,原子力規制委員会が発足し,「原子炉等規制法」等が改正された(以下,新規制基準という)。新規制基準では深層防護を基本とし、共通要因による安全機能の喪失を防止する観点から、自然現象の想定が大幅に引き上げられると共に,シビアアクシデントを規制対象とすることになった。
この法律の改正を受けて、「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2015)として改定・発刊を行うとともに、シビアアクシデントに対して設けられる重大事故等対処施設に対応する耐震設計が要求されたことから「原子力発電所耐震設計技術指針 重大事故等対処施設編(基本方針)」(JEAG4601-2015[2016年追補版])を新たに制定した。
これらの規程及び指針は、共に改定され基準地震動などが規定された「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2015)と一体で運用されるものであり,それぞれの規程及び指針の記載事項の関係について十分な理解が必要である。
なお,新規制基準に係る適合性審査は,現在も継続して実施されているところであり,その審査の過程で示される知見については,継続的な取り組みによる新たな研究成果と併せて今後も引き続き収集に努め,反映が必要な事項を整理していく。
言うまでも無く,耐震設計の適否は,実際の地震に遭遇してはじめて,明確になるものであるが,本技術規程はその基本を示すものである。その解釈,運用については,使用者の格段の配慮を期待するものである。
最後に,検討及び審議に参加してご協力いただいた関係各委員の方々及び関係諸機関の方々,そして特にご尽力いただいた原案作成者,検討会幹事の方々に厚くお礼申し上げる。
平成28年12月
原子力規格委員会
耐震設計分科会
分科会長 原 文雄