地震と基準地震動,地質・地盤調査,地盤の安全性評価及び土木構造物の耐震設計,建物・構築物の耐震設計,機器・配管系の耐震設計などの各分野にわたる原子力発電所の耐震設計技術を示している。
第1章 総 論
1.1 基本的考え方
1.1.1 耐震設計の目的
1.1.2 耐震設計と安全設計
1.2 耐震設計の概要
1.2.1 耐震設計の流れ
1.2.2 耐震重要度分類
1.2.3 設計用地震力
1.2.4 地震と基準地震動の概要
(1)「審査指針」の概要
(2) 地震の概要(設計用最強地震,設計用限界地震)
(3) 基準地震動の概要及び評価
1.2.5 地質・地盤調査の概要
(1) 概要
(2) 地質調査
(3) 地盤調査・試験
1.2.6 地盤の安定性評価及び土木構造物の耐震設計の概要
(1) 原子炉建屋基礎地盤
(2) 原子炉建屋周辺斜面
(3) 屋外重要土木構造物
1.2.7 建物・構築物の耐震設計の概要
(1) 基本的事項
(2) 地震応答解析
(3) 応力解析と構造設計
(4) コンクリート製格納容器
1.2.8 機器・配管系の耐震設計の概要
(1) 耐震設計の基本方針
(2) 地震応答解析と設計用地震荷重
(3) 応力・強度解析
(4) 耐震安全性評価
第2章 地震と基準地震動
2.1 地震と基準地震動の概要
2.2 地震
2.2.1 過去の地震
(1) 地震活動性
(2) 地震被害歴
(3) 地震動の強さの統計的期待値
(4) 考慮すべき過去の地震
2.2.2 活断層
(1) 活断層
(2) 活断層と過去の地震
(3) 活断層と微小地震
(4) 考慮すべき活断層による地震
2.2.3 地震地体構造
(1) 地震地体構造
(2) 考慮すべき地震地体構造による地震
(3) 直下地震
2.3 基準地震動
2.3.1 地震動特性
(1) 地震動の最大振幅
(2) 岩盤における地震動の周波数特性
(3) 断層モデルによる地震動の推定
(4) 地震動の継続時間と振幅包絡線の経時的変化
2.3.2 基準地震動
(1) 考慮する地震
(2) 地震動の定義位置
(3) 敷地における地震動特性
2.3.3 模擬地震波の作成
2.4 その他
2.4.1 地震予知
(1) 地震予知
(2) 大規模地震対策特別措置法
2.4.2 津波
第3章 地質・地盤調査
3.1 地質・地盤調査の概要
3.1.1 地質調査の慨要
3.1.2 地盤調査・試験の概要
3.2 地質調査
3.2.1 調査の目的と範囲
(1) 調査の目的
(2) 調査の範囲
3.2.2 広域調査
(1) 調査計画
(2) 地質・地質構造の評価
3.2.3 敷地内調査
(1) 調査計画
(2) 地質・地質構造の評価
(3) 岩盤分類
3.3 地盤調査・試験
3.3.1 調査・試験の目的
3.3.2 調査項目及び調査範囲
(1) 原子炉建屋基礎地盤
(2) 原子炉建屋周辺斜面
(3) 屋外重要土木構造物地盤
3.3.3 安定性検討に必要な物性
(1) 静的強度特性
(2) 静的変形特性
(3) 動的強度特性
(4) 動的変形特性
(5) 減衰特性
3.3.4 地盤の分類と工学的特性・評価
(1) 地盤の分類
(2) 地盤の工学的特性と評価
(3) 地盤構成材料の分類
(4) 地盤構成材料の工学的特性と評価
3.3.5 物性の表示方法と設計への適用
(1) 静的強度特性の表示
(2) 静的変形特性の表示
(3) 動的強度特性の表示
(4) 動的変形・減衰特性の表示
(5) 地盤物性のバラツキの評価方法
3.4 調査・試験計画の例
第4章 地盤の安定性評価及び土木構造物の耐震設計
4.1 耐震設計の基本方針
4.1.1 地盤及び土木構造物の耐震重要度の評価
4.1.2 設計用地震力の考え方
4.1.3 安全性評価の基本的な考え方
4.2 原子炉建屋基礎地盤
4.2.1 地盤のモデル化
(1) 基礎地盤の調査と区分
(2) 物性
4.2.2 設計用地震力
(1) 静的検討に用いる地震力
(2) 動的検討に用いる地震動
4.2.3 耐震設計法
(1) すべり面法等の慣用法による解析
(2) 静的解析
(3) 動的解析
(4) その他
4.2.4 安定性の評価
(1) 詳細項目
(2) 評価基準値
4.3 原子炉建屋周辺斜面
4.3.1 地盤のモデル化
(1) 安定性評価の対象とすべき斜面
(2) 物性
(3) その他考慮すべき条件
4.3.2 設計用地震力
(1) 静的検討に用いる地震力
(2) 動的検討に用いる地震動
4.3.3 耐震設計法
4.3.4 安定性の評価
(1) 評価項目
(2) 評価基準値
4.4 屋外重要土木構造物
4.4.1 基本的な考え方
(1) 対象構造物の範囲
(2) 必要とされる機能
4.4.2 考慮すべき事項
(1) 地震の影響
(2) 物性
4.4.3 設計用地震力
(1) 動的検討に用いる地震動
(2) 静的検討に用いる地震力
4.4.4 構造物の耐震設計法
(1) 耐震設計の手順
(2) 震度法
(3) 応答変位法
(4) 動的解析法
4.4.5 安全性の評価
(1) 地盤の安定性
(2) 構造物部材の安全性の照査
(3) 相対変位
4.5 その他土木構造物
4.6 耐震設計に当たっての問題点の検討及び耐震設計の例
4.6.1 原子炉建屋基礎地盤
(1) 検討項目
(2) 検討用モデル
(3) 検討結果
4.6.2 原子炉建屋周辺斜面
(1) 検討項目
(2) 検討用モデル
(3) 検討結果
4.6.3 屋外重要土木構造物
(1) 検討項目
(2) 検討用モデル
(3) 検討結果
第5章 建物・構築物の耐震設計
5.1 基本的事項
5.1.1 耐震設計の基本方針
5.1.2 耐震設計上の重要度分類
5.1.3 地震力の算定法
(1) 静的地震力
(2) 動的地震力
5.1.4 荷重の組合せと許容限界
(1) 荷重とその組合せ
(2) 許容限界
5.1.5 建物・構築物の機能及び構造
(1) 構造計画
(2) BWR 原子炉建屋
(3) PWR 原子炉建屋
(4) コンクリート製格納容器
(5) その他建物及び構築物
5.2 地震応答解析
5.2.1 概要
(1) 入力地震動
(2) 建屋−地盤連成モデル
(3) 上部構造モデル
(4) 耐震壁の復元力特性及び基礎マットの浮上り非線形特性
(5) 振動方程式の数値解析手法
(6) 建屋応答結果
5.2.2 地盤及び構築物の物性値評価
(1) 地盤の物性値
(2) 建物・構築物の物性値
5.2.3 建物・構築物と地盤の相互作用
(1) 解析理論
(2) 解析手法
5.2.4 線形地震応答解析
(1) 建物・構築物のモデル化
(2) 設計用入力地震動
(3) 応答解析手法
(4) その他
5.2.5 非線形地震応答解析
(1) 概要
(2) 建物・構築物の復元力特性
(3) 地盤の復元力特性
(4) 非線形応答解析手法
(5) 非線形応答特性
5.2.6 建屋安定性の検討
(1) 接地圧の評価
(2) 滑動の評価
5.3 応力解析と構造設計
5.3.1 概要
5.3.2 応力解析
(1) 建屋形状及び構造形式の概要
(2) 荷重条件
(3) 解析方法
5.3.3 断面設計
(1) 応力の組合せ
(2) 断面算定の方法
5.3.4 機能維持の検討
(1) 要求機能と部位
(2) 許容限界値の考え方
(3) 終局強度設計
5.3.5 安全余裕度
(1) 静的地震力に対する評価
(2) 動的地震力に対する評価
5.4 コンクリート製格納容器
5.4.1 一般事項
(1) 概要
(2) 技術基準の概要
(3) 設計用荷重の種類
(4) 設計用荷重の組合せと荷重状態
(5) 設計許容値
5.4.2 PCCV
(1) 概要
(2) 構造解析
(3) 断面設計
(4) 実験検証
5.4.3 RCCV
(1) 概要
(2) 構造解析
(3) 断面設計
(4) 実験検証
5.5 解析例
5.5.1 BWR(MARK-Ⅱ)
(1) 建屋概要
(2) 解析条件
(3) 地震応答解析
(4) 主要構造部の応力解析と断面設計
5.5.2 PWR(4LOOP)
(1) 建屋概要
(2) 解析条件
(3) 地震応答解析
(4) 主要構造部の応力解析と断面設計
第6章 機器・配管系の耐震設計
6.1 基本的事項
6.1.1 耐震設計の基本方針
(1) 構造計画と耐震支持計画
(2) 耐震解析と安全性評価
6.1.2 耐震重要度分類
6.1.3 荷重の組合せと許容限界
(1) 荷重の組合せ
(2) 許容限界
6.1.4 設計用地震力
6.1.5 地震応答解析
(1) 応答解析法一般
(2) 解析モデル
(3) 地震応答解析と設計用地震荷重
6.1.6 応力・強度解析
(1) As,A クラス機器の応力解析
(2) B,C クラス機器の応力解析
(3) 支持構造物の応力解析
6.1.7 耐震安全性評価
6.1.8 耐震設計の基本手順
6.2 重要度分類
6.2.1 基本方針
6.2.2 重要度分類の概要
6.3 荷重の組合せと許容限界
6.3.1 基本方針
(1) 記号の説明
(2) 耐震As 及びA クラス施設
(3) 耐震B 及びC クラス施設
6.3.2 荷重の組合せ
(1) 地震荷重と組合せる運転状態
(2) 荷重の組合せと許容応力状態
6.3.3 主要機器の許容応力
(1) 耐震As 及びA クラス施設の許容応力
(2) 耐震B 及びC クラス施設の許容応力
6.4 設計地震力
6.4.1 重要度分類と設計用地震力
6.4.2 静的地震力
(1) 屋内の一般機器
(2) 建屋連成系の機器
(3) 屋外の機器
6.4.3 動的地震力の概要
(1) As 及びA クラス機器
(2) B クラス機器
6.5 地震応答解析
6.5.1 床応答スペクトル
(1) 床応答スペクトル算定の一般事項
(2) 設計用床応答スペクトル
6.5.2 動的解析モデル
(1) 機器・配管系のモデル化基本方針
(2) 容器
(3) 配管
(4) その他機器
(5) 支持構造物
6.5.3 設計用滅衰定数
(1) S1 地震応答用
(2) S2 地震応答用
6.5.4 地震応答解析法
(1) 建屋連成系の機器
(2) 容器
(3) 配管
(4) その他機器
(5) スロッシング
6.6 応力・強度解析
6.6.1 荷重・応力の組合せ
(1) 地震力と組合せるべき荷重
(2) 地震応力算定の概要
6.6.2 As 及びA クラス機器
(1) 応力解析の基本事項
(2) 第1 種機器
(3) 第2 種容器
(4) 第3 種機器
(5) その他機器
6.6.3 B 及びC クラス機器
(1) 容器
(2) 配管
(3) その他機器
6.6.4 支持構造物
(1) 支持構造物一般
(2) アンカー部
(3) 埋込金物
6.7 As 及びA クラス機器の地震時機能確認
6.7.1 動的機器
6.7.2 電気計装機器
第7章 今後の技術的課題の展望
7.1 地震と基準地震動
7.1.1 標準的な地震カタログの作成
7.1.2 地震地体構造の評価
7.1.3 地震動特性の評価
7.1.4 断層モデルに基づく地震動評価
7.1.5 上下地震動
7.2 地質・地盤調査
7.2.1 断層の活動性評価
7.2.2 砂礫地盤の調査法・評価法
7.2.3 節理性岩盤及び岩盤内不連続面の評価法
7.2.4 岩盤の引張強度評価
7.2.5 静的物性と動的物性の相関
7.3 地盤の安定性評価及び土木構造物の耐震設計
7.3.1 地盤震度
7.3.2 地震時土圧
7.3.3 大変形問題
7.3.4 屋外重要構造物の限界状態設計
7.4 建物・構築物の耐震設計
7.4.1 建物と地盤の動的相互作用の設計上の取扱い
7.4.2 地震時土圧
7.4.3 復元力特性
7.4.4 機能維持の検討について
7.4.5 耐震余裕度について
7.4.6 上下動の動的解析
7.4.7 免震構造
7.4.8 第四紀層地盤立地
7.5 機器・配管系の耐震設計
7.5.1 現在の標準的技術
7.5.2 新知見による高度化技術
7.5.3 将来活用すべき技術
あとがき
添付資料
添付資料1 許認可及び関連法令等について
添付資料2 試験・検査
2.1 地盤調査における試験・検査
2.2 建物・構築物に関する試験・検査
2.3 機器・配管系に関する試験・検査
添付資料3 地震感知装置
添付資料4 地震後の点検
付 録
付録1 各種試験・研究一覧
付録2 改良標準化調査
付録3 各発電所耐震仕様
付録4 最近の内陸型地震に関する調査報告
付録5 基本文献・参考図書一覧
付録6 原子力工学試験センター,原子力安全解析所耐震関係コードの概要・一覧
原子力発電所の耐震設計に関する指針を検討するために,電気技術基準調査委員会原子力専門委員会は昭和43年1月「耐震設計分科会」を設置し審議を進めた。「原子力発電所耐震設計技術指針:JEAG4601-1970」原案は,逐次耐震設計分科会の検討を得て,昭和45年5月に原子力専門委員会,ついで同年7月には電気技術基準調査委員会の承認を得て完成された。なお,ここでは設計地震の定義,地震時の許容応力について論議されたが,これに関しては科学技術庁の原子力平和利用委託研究として基礎的研究がなされていた。
一方このような状況下にあって,日本電気協会は昭和49年通商産業省より上記設計地震の定義及び地震時の許容応力と密接に係る"耐震設計用地震力のとり方に関する指針"の検討の依頼を受けた。この検討のすすめ方については原子力専門委員会で審議した結果,原子力平和利用委託研究の成果に留意しつつ検討することとなり,電気技術基準調査委員会の下に「原子力耐震安全評価特別委員会」を発足させ,昭和50年4月に中間報告書がまとめられた。更に,昭和43年来の耐震設計分科会の中に設置されていた「機器・配管許容応力小委員会」の結論と,この中間報告書により,"状態の組合せと応力評価に関する指針"及び"原子力発電設備の耐震設計上の重要度分類とその適用範囲に関する指針"について検討を加えるため,この特別委員会の下に「許容応力分科会」及び「耐震安全重要度分類分科会」をそれぞれ昭和50年11月に発足させた。これにより「原子力発電所耐震設計技術指針:JEAG4601-1970」の重要度分類及び許容応力について増補,改訂がなされ「原子力発電所耐震設計技術指針:重要度分類・許容応力編,JEAG4601・補-1984」となり,昭和59年に発行された。
一方,JEAG4601-1970は,昭和35年以来実地での発電所の設計が先行していたため耐震設計の基礎的知識を集約することに重点が置かれて記載されていた。そこでこの増補版と内容の記述方式などの整合をとり,最近の知見を加えて本文全般について,これの改訂を行うことになり,電気技術基準調査委員会原子力専門委員会の下に,昭和59年1月より「耐震設計分科会」が再び設置された。
本文の執筆方針については準備会,各種関係機関と検討調整の結果を踏まえ,第1回分科会で下記のごとく定められた。
すなわち,今回の改訂に当たっては,より技術指針的性格を強く出し,現時点に至るまでの許認可の経験をもとに,いわゆるライセンサブルなものについて,耐震設計の筋道を樹て記述することを原則とする。新規手法について各種の方法による研究試験が完了したもののうち本協会「原子力発電耐震設計特別調査委員会」において審議が終了し,通商産業省へ報告がなされ,今後の取扱いの見通しが明確になったものは前者に準じ記述する。その他の研究成果については,その公表の度合いを付して一覧表とし,今後の発展・実用化を待つこととする。
本指針の適用範囲は軽水炉を中心とするものであるが,いわゆる「ATR」などの圧力管型炉にも,その特有な部分を除いては適用可能であると考えられている。また将来の高速増殖炉などについても,基本的事項は適用し得ることは明らかである。
このような方針でまとめられた内容は,原案では膨大な頁数となったが極力短縮してこの量となった。未だ例題,内容の背後にあるものの説明など不十分な点が多いが,引用文献,参考文献を参考にしていただくよう希望する。
この改訂作業に当っては,前記の背景から得られた全ての技術的成果を採り入れ,最新の「耐震設計技術指針」を作成すべく,前述のように詳細多岐に亘る百科事典的なものよりも,「指針」らしい体裁を備え,なおかつ公式集的なものではないということで最終稿がまとめられた。耐震設計分科会には,各章を総括的に検討する総括検討会,各専門分野の検討を行うための地震動検討会,土木構造物検討会,建物・構築物検討会,及び機器・配管系検討会を設け多くの執筆者が多大の努力を傾注して作成した。ここに至るまでには各検討会で数回の改稿が行われ,総括検討会40回,地震動検討会16回,土木構造物検討会16回,建物・構築物検討会22回,機器・配管系検討会27回,そして7回の分科会の審議を経て完了した。
ここに関係各委員,関係官庁の方々,執筆者各位(社内等で分担された方々でお名前を把握していない方も含め),多くのコメントを寄せられた電力はじめ各社の方々,協会事務局の方々,そして特にご尽力いただいた各検討会の幹事の方々に厚くお礼申し上げる。
昭和62年8月
電気技術基準調査委員会
原子力専門委員会
耐震設計分科会 分科会長 柴田 碧