基準地震動策定,地質・地盤調査,基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価,並びに基準津波策定に関する事項をまとめたものである。本技術指針と「原子力発電所耐震設計技術規程」JEAC4601-2021を併用する場合には,両者の記載事項の関係について十分な吟味が必要である。
第1章 基準地震動策定
1.1 基本事項
1.1.1 適用範囲
1.1.2 用語の定義
1.1.3 基本方針
1.1.4 基準地震動Ssの策定位置
1.2 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動
1.2.1 敷地周辺で発生する地震に関する調査
1.2.2 検討用地震の選定
1.2.3 地震動評価
1.3 震源を特定せず策定する地震動
1.4 基準地震動Ssの策定
附属書1.1 経験的な方法に用いる手法の留意事項
参考文献
参考資料1.1 地震カタログ
参考資料1.2 マグニチュードの説明
参考資料1.3 気象庁震度階級及び気象庁震度階級関連解説表
参考資料1.4 海洋プレート内地震
参考資料1.5 2011年東北地方太平洋沖地震の地震動特性及び震源特性
参考資料1.6 関連する地震の調査・研究
参考資料1.7 地震地体構造マップ
参考資料1.8 地震発生層の設定について
参考資料1.9 地震基盤の考え方
参考資料1.10 既往の経験的な方法
参考資料1.11 震源のモデル化のための基礎的関係式
参考資料1.12 断層モデルを用いた地震動評価手法
参考資料1.13 震源を特定せず策定する地震動として用いる応答スペクトルのレベル
参考資料1.14 2004年留萌支庁南部の地震におけるK-NET港町観測点の基盤地震動
参考資料1.15 模擬地震波の作成例
参考資料1.16 2007年新潟県中越沖地震の震源特性について
参考資料1.17 震源極近傍における地震動の特徴について
第2章 地質・地盤調査
2.1 基本事項
2.1.1 適用範囲
2.1.2 用語の定義
2.2 地質・地質構造に関する調査
2.2.1 調査範囲の設定
2.2.2 調査の方法
2.2.3 調査結果に基づく評価
2.2.4 表示の様式
2.3 基礎地盤及び周辺斜面に関する調査
2.3.1 調査範囲の設定
2.3.2 調査の方法
2.3.3 調査結果に基づく評価
2.3.4 表示の様式
2.4 地震動評価に関する地下構造調査
2.4.1 調査範囲の設定
2.4.2 調査の方法
2.4.3 調査範囲と調査手法の組み合わせ
2.4.4 調査結果に基づく評価
2.5 津波に関する地質調査
2.5.1 津波の発生要因・波源モデルの設定に関する地質調査
2.5.2 敷地周辺に到達した可能性のある津波の調査(津波堆積物の調査)
2.5.3 津波伝播経路に関する調査
2.5.4 砂移動に関する調査
附属書 2.1 火山地域において震源を特定しにくい要因が想定されるケースにおける活断層調査・評価フロー
参考文献
参考資料2.1 活断層等の存在の可能性に関する調査手法例
参考資料2.2 断層の詳細性状の主な調査手法について
参考資料2.3 光ルミネッセンス(OSL)年代測定法の例
参考資料2.4 小断層解析(多重逆解法)による応力状態の評価の例
参考資料2.5 岩盤の異方性の測定例
参考資料2.6 礫岩の測定例
参考資料2.7 岩石の動的強度を評価するための試験方法
第3章 基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価
3.1 基本事項
3.1.1 適用範囲
3.1.2 用語の定義
3.2 地震力に対する基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価
3.2.1 評価の手順
3.2.2 基礎地盤及び周辺斜面のモデル化
3.2.3 すべり面の設定
3.2.4 動的解析(周波数応答解析)による安定性評価
3.2.5 静的非線形解析等による安定性評価
3.2.6 動的解析(時刻歴応答解析)等による安定性評価
3.3 地殻変動に対する基礎地盤の安定性評価
3.3.1 評価の手順
3.3.2 評価基準
附属書 3.1 基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価の流れ
附属書 3.2 地殻変動に対する基礎地盤の安定性評価の流れ
参考文献
参考資料 3.1 基礎地盤の安定性評価手順
参考資料 3.2 周辺斜面の安定性評価手順
参考資料 3.3 弱層のモデル化
参考資料 3.4 アンカー工を有する地震時安定性評価
参考資料 3.5 抑止杭工を有する斜面の地震時安定性評価
参考資料 3.6 地盤安定性評価における減衰定数
参考資料 3.7 鉛直地震動入力を考慮した等価線形解析における地盤剛性,減衰定数の設定に関する留意点
参考資料 3.8 地盤物性値のばらつきの影響評価
参考資料 3.9 斜面崩落による土塊等の到達距離の事例
参考資料 3.10 斜面崩落による土塊・岩塊等の到達距離の評価例
参考資料 3.11 基礎地盤及び周辺斜面の耐震安定性評価基準値
参考資料 3.12 ニューマーク法を用いた斜面の変位量評価例
参考資料 3.13 動的解析(時刻歴応答解析)を用いた斜面の地震時変位量の評価例
参考資料 3.14 盛土の被害程度と沈下量の目安
参考資料 3.15 食い違い弾性論を用いた過去の地震時の地盤変位量の再現事例
参考資料 3.16 地殻変動に対する基礎地盤の安定性評価フローの一例
参考資料 3.17 動力学的破壊進展モデル等を用いた断層変位評価例
第4章 基準津波策定
4.1 基本事項
4.1.1 適用範囲
4.1.2 準用する基準類
4.1.3 用語の定義
4.2 基本方針
4.3 基準津波Tsの策定及び入力津波の評価
4.3.1 基準津波Tsの策定に係る調査
4.3.2 津波発生要因の選定
4.3.3 想定する津波波源の設定
4.3.4 津波評価手法
4.3.5 津波波源のモデル化に係る不確定性の検討
4.3.6 想定津波からの基準津波Tsの選定
4.3.7 基準津波Tsの選定結果の検証及び入力津波の評価
4.3.8 その他
4.4 超過確率の参照
附属書4.1 基準津波Ts策定~入力津波評価の流れ
参考文献
我が国の原子力発電所施設の耐震設計に関しては,その考え方を含めて実験・試験等の結果及び関連する技術がまとめられ,本協会の「原子力発電所耐震設計指針」(JEAG4601-1970)として初刊本が出版された。その後,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日 原子力安全委員会決定)」(以下,耐震審査指針(1981)と略す)を踏まえて,「原子力発電所耐震設計技術指針 重要度分類・許容応力編」(JEAG4601・補-1984),「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-1987),「原子力発電所耐震設計技術指針 追補版」(JEAG4601-1991追補版)が新たな知見を踏まえて発刊された。
耐震審査指針(1981)は,1995年兵庫県南部地震の発震並びに同地震により励起された地震動による土木・建築物等の構築物の損傷・被害の分析・解析等に基づき,耐震設計に関連する技術(以下,耐震技術)に係る当時得られていた新たな知見を取り入れた,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(平成18年9月19日 原子力安全委員会決定)」(以下,耐震審査指針(2006)と略す)として改定された。この耐震審査指針改定を受け,「原子力発電所耐震設計指針」(JEAG4601)の改定が着手された。この改定作業を進めるにあたり,基準地震動の策定並びに地質調査に関する事項については関連する分野で得られている知見を取り入れて,「原子力発電所耐震設計技術指針 基準地震動策定・地質調査編」(JEAG4601-2007)としてそれまでのJEAG4601より分離して,先行発刊された。その後,「基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価」と「津波水位評価」をこれに加えて,「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2008)として別冊として改定発刊された。
一方,JEAG4601・補-1984,JEAG4601-1987並びに,JEAG4601-1991追補版に含まれる施設の耐震設計に係る部分について一体化を図るとともに,当時得られていた最新の知見を取り入れて耐震審査指針(2006)に適合するように見直しを行った。その際,耐震技術に係る事項を取りまとめ,新しい体系として“設計技術指針”を“設計技術規程”に衣替えをした「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2008)を制定した。この時点において,耐震技術のうち,設計において入力条件となる地震・地震動,斜面崩壊,津波等の自然現象に係り定める事項を指針(JEAG)として,設計において設計条件・過程を定める事項を規程(JEAC)として整理し,それぞれに分けてまとめたことになる。
JEAG4601-2008,JEAC4601-2008はその後,2007年新潟県中越沖地震で得られた知見,研究で得られた設計技術の知見等,さらには2011年東北地方太平洋沖地震における東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故を受けて原子力規制委員会改正による「原子炉等規制法」等(以下,新規制基準と略す)の内容を踏まえ,「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2015),「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2015)として改定された。また,新規制基準では深層防護を基本とし,共通要因による安全機能の喪失を防止する観点から,シビアアクシデントを規制対象とすることになったことを受けて「原子力発電所耐震設計技術指針 重大事故等対処施設編(基本方針)」(JEAG4601-2015[2016年追補版])が新たに制定された。
今回改定の「原子力発電所耐震設計技術指針」(JEAG4601-2021)では,基本的な体系はJEAG4601-2015の構成方針を引き継ぎつつ,前回改定以降に得られた研究成果等の新たな知見として“地下構造調査手法”に関する内容の充実を取り入れている。
耐震設計に係る研究・開発は広く各方面で精力的に進められており,また新規制基準に係る適合性審査は現時点において継続して実施されている状況下で,新たな知見は現在も日々積み重ねられているところである。これらの新知見については引き続き収集に努め,本指針の更なる高度化を図って行く所存である。
なお,本指針は時期を揃えて改定される原子力施設の耐震設計技術を規定する「原子力発電所耐震設計技術規程」(JEAC4601-2021)と一体で運用されるものであり,それぞれの指針(JEAG)及び規程(JEAC)の記載事項の相互関係について十分な理解が必要である。断るまでもなく,耐震設計・耐津波設計等の適切性の適否は,実際に地震・津波等に遭遇してはじめて明確になる事項であろう。本技術指針及び技術規程は,自然事象としての地震に対する基本的な設計の手法を提示するものであり,その解釈,運用については本書使用者の格段の配慮を期待するものである。
最後に,本指針の策定にあたり,検討及び審議に参加しご協力いただいた関係各委員の方々及び関係諸機関の方々,そして特にご尽力いただいた原案作成者,検討会幹事の方々に厚くお礼申し上げる。
2021年3月
原子力規格委員会
耐震設計分科会
分科会長 久保 哲夫