本指針は,原子力発電所及び使用済燃料の再処理施設に従事する放射線業務従事者及び管理区域に一時的に立入る者が受ける線量を,合理的に達成できる限り低くするよう必要な対策をとることを目的として,個人線量モニタリングの考え方及び方法を定めています。
今回の改定においては,本年4月に放射線業務従事者の眼の水晶体の等価線量限度を引き下げ,線量の測定及び算定方法の一部を変更する改正法令が施行されたことから,この改正内容を取り込んだ見直しを行いました。なお改定案の検討に当たっては、国内外の規格・基準の動向にも十分な配慮を払いました。
1. 序論
1.1 目的
1.2 適用範囲
2. 関連法規等
2.1 関連法令,規定
2.2 引用規格
3. 管理方法
3.1 モニタリングの種類
3.1.1 日常モニタリング
3.1.2 作業モニタリング
3.1.3 特殊モニタリング
3.1.4 確認モニタリング
3.2 線量とモニタリングの関係
3.2.1 外部被ばくによる線量
3.2.2 内部被ばくによる線量
3.3 管理レベルの設定
3.3.1 記録レベル
3.3.2 調査レベル
3.3.3 介入レベル
3.4 眼の水晶体の等価線量に係る管理基準の設定
4. 測定法
4.1 外部被ばくによる線量の測定
4.1.1 測定対象者
4.1.2 測定部位
4.1.3 測定頻度
4.1.4 測定方法
4.1.5 個人線量計の校正方法
4.2 内部被ばくによる線量の測定
4.2.1 測定対象者
4.2.2 測定頻度
4.2.3 測定方法
4.2.4 測定結果からの摂取量の評価
4.2.5 内部被ばくの線量測定に用いる測定器の校正方法
5. 算定
5.1 実効線量の算定
5.1.1 外部被ばくによる実効線量の算定
5.1.2 内部被ばくによる実効線量の算定
5.2 等価線量の算定
5.3 算定頻度及び数値の取扱い
5.3.1 外部被ばく
5.3.2 内部被ばく
6. 記録
原子力施設で働く放射線業務従事者に対して実施する個人線量モニタリングは,放射線業務従事者が受ける線量を,合理的に達成できる限り低くするよう管理し,必要な防護対策をとるために,極めて重要であります。
我が国の原子力発電所における放射線計測に関する技術基準は「発電用原子力設備に関する技術基準」(昭和40年通商産業省令第62号)に定められていますが,原子力発電所の個人線量モニタリングについて具体的に言及した指針・解説が整備されていなかったことから,1990年3月,本指針を制定しました。
その後,電子式線量計の進歩や計量法の改正に配慮した1996年5月の改定第1回,国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告(Publication 60)を取り入れた国内法令の内容を反映させた2003年5月の改定第2回に続き,2009年3月には外部線量測定の主要測定器に関する事項について発電所の運用実態の反映を主眼とした改定第3回を発行しました。さらに2015年8月の前回改定第4回では,福島第一原子力発電所の事故の経験を踏まえ慎重な審議を重ね,事故時の内部被ばく線量測定・評価方法の追加,放射線管理・放射線防護に関する国の指示事項等の反映等を図るとともに,使用済燃料の再処理施設への適用拡大を行いました。
この度の改定は,ICRPの「組織反応に関する声明」(2011年,ソウル声明)での眼の水晶体の等価線量限度の引き下げに係る勧告を踏まえて本年4月に施行された国内法令の改正を受けたもので,改定第5回にあたります。主要改定事項は以下のとおりです。
1.法令改正の内容(放射線業務従事者の眼の水晶体の等価線量限度の引き下げ,線量の測定・算定・記録方法の変更・追加等)の必要箇所への反映
2.関係法令,規定,規格,参考文献の見直し
3.用語・表現の整理,適正化等,所要の見直し
線量限度の見直しを受けた改定は,2003年度の改定第2回以来2回目となります。今後本指針を利用される皆様の率直なご批判とご助言により,さらに追補と改定に努めたいと念じております。
最後に,本指針の改定にあたり絶大な助力を賜りました関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々など関係各位に深く感謝する次第であります。
2021年6月
原子力規格委員会
放射線管理分科会
分科会長 中村尚司