「安全機能,重大事故等に対処する機能を有する電気・機械装置の重要度分類指針」(JEAG4612-2021)の「第Ⅰ編 設計基準対象施設編(DB編)」を踏まえた原子炉施設(設計基準対象施設)の安全機能を有する計測制御装置の設計上考慮すべき事項並びに「第Ⅱ編 重大事故等対処設備編(SA編)」を踏まえた原子炉施設(重大事故等対処施設)の重大事故等対処設備の計測制御装置の設計上考慮すべき事項について示している。
また,参考として,代表プラントをモデルとして,安全機能を有する計測制御装置の安全上の機能別重要度分類の例及び重大事故等対処設備の計測制御装置の重要度分類の例を示している。
3.1 関連法令
3.2 関係指針類
3.3 日本電気協会電気技術規程,技術指針
3.4 海外規格
3.5 その他国内規格
4.用語の定義
5.安全機能を有する計測制御装置
5.1 安全機能を有する計測制御装置の定義と分類
5.1.1 異常発生防止系(PS)
5.1.2 異常影響緩和系(MS)
5.1.3 分類の適用の原則
5.2 安全機能を有する計測制御装置の設計上の要求事項
5.2.1 計測範囲,精度,設定値についての設計上の要求事項
5.2.2 電源,耐環境性,耐震性等についての設計上の要求事項
5.2.3 試験,検査に関する設計上の要求事項
5.2.4 記録に関する設計上の要求事項
5.2.5 品質保証に関する要求事項
6.重大事故等対処設備の計測制御装置
6.1 重大事故等対処設備の計測制御装置の定義と分類
6.1.1 機能に基づくパラメータの定義
6.1.2 重要度に基づく計測制御装置の定義と分類
6.1.3 重大事故防止設備(SA-P)
6.1.4 重大事故緩和設備(SA-M)
6.2 重大事故等対処設備の計測制御装置の設計上の要求事項
6.2.1 計測範囲,精度,設定値についての設計上の要求事項
6.2.2 電源,耐環境性,耐震性等についての設計上の要求事項
6.2.3 試験,検査に関する設計上の要求事項
6.2.4 指示,記録に関する設計上の要求事項
6.2.5 品質保証に関する要求事項
6.2.6 計測期間に関する要求事項
〔解 説〕
別 表
原子力発電所の安全性ならびに安定運転を確保するためには,安全機能を有する構築物,系統及び機器の十分な信頼性をその安全機能の重要度に応じて適切に確保することがきわめて重要です。また,重大事故等に対処するためには,重大事故等に対処する機能を有する構築物,系統及び機器の信頼性をその機能の重要度に応じて適切に確保することが重要です。
我が国では,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定,平成13年3月29日一部改訂)の中で,安全機能を有する構築物,系統及び機器に対して,「1.その安全機能の重要度に応じて十分に高い信頼性を確保し,かつ,維持し得る設計であること。」,「2.重要度の特に高い安全機能を有する系統については,その構造,動作原理,果たすべき安全機能の性質等を考慮して,多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること。」,「3.前項の系統は,その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え,外部電源が利用できない場合においても,その系統の安全機能が達成できる設計であること。」が要求されております。また,「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定,平成18年9月19日一部改訂)(以下,「重要度分類審査指針」という。)の中で,発電用軽水型原子炉施設の安全機能について,安全上の見地からそれらの相対的重要度が定められております。さらに,福島第一原子力発電所事故における教訓を踏まえて,「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(平成25年6月19日原子力規制委員会決定,一部改正令和2年1月23日)(以下,「設置許可基準規則」という。)及び「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」(平成25年6月19日原子力規制委員会決定,一部改正令和2年1月23日)(以下,「技術基準規則」という。)が制定され,「重大事故等対処設備に関する要求事項」等が新たに定められております。
本指針は,安全機能を有する計測制御装置に対して,「重要度分類審査指針」をより具体化,詳細化し,実際の設計を実施する上で必要となる,装置の重要度や各重要度クラスに応じた設計要求を明確化することを目的に,1991年,「安全機能を有する計測制御装置の設計指針」として制定されたものです。また,国内の規制動向,最新の関連指針との整合性等を踏まえ,2009年に第1回の改定を実施しております。
(一社)日本電気協会原子力規格委員会では,前記の「設置許可基準規則」及び「技術基準規則」をはじめとした国内の規制動向,「安全機能,重大事故等に対処する機能を有する電気・機械装置の重要度分類指針」(JEAG4612-2021)(以下,「JEAG4612」という。)をはじめとした同協会における最新の関連指針との整合性,国内外における関連規格や運転経験について調査を行い,その結果を踏まえて,本指針を改定することと致しました。
具体的には,重大事故等対処設備の計測制御装置に関する内容を新たに追加し,安全機能を有する計測制御装置と同様に「定義と分類」,「設計上の要求事項」を定めております。また,重要度分類については,「JEAG4612」に基づいて設定すると共に,「重大事故等対処設備の計測制御装置の安全重要度分類フロー」を設定し,その考え方を明確化しております。さらに,重大事故等対処設備の計測制御装置に関する重要度を具体的かつ個別に規定した別表を作成し,重大事故等時に要求される機能との対応も明確化しております。
計測制御技術については,その進歩が目覚ましく,今後も様々な課題が考えられますが,技術動向を注視しつつ,引き続き本指針の改善を図って参ります。
本指針の改定に当たって,関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝する次第であります。
2021年6月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 古田一雄