日本電気協会

原子力規格委員会

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JEAG4614-2019
原子力発電所免震構造設計技術指針

概 要

 本指針は上部構造(建物・構築物)の下部に免震装置を設置し,全体構造の固有周期を地震動が卓越する周期より長周期化するとともに,減衰機構を付加することにより上部構造に作用する地震力の低減をはかる免震構造に関するものである。
  今回の改定では,新規制基準との整合や2011年東北地方太平洋沖地震から得られた知見を反映するとともに,次世代軽水炉等技術開発及び発電用原子炉等技術開発における各種実験成果等を踏まえた最新知見を取り入れている。

目 次

1. 適用範囲
2. 用語・記号と略称
3. 基本方針
4. 耐震設計上の重要度分類
5. 免震設計評価法
  5.1 方針
  5.2 基準地震動及び設計用地震動の評価法
  5.3 設計用地震力の算定法
   5.3.1 静的地震力
   5.3.2 基準地震動及び設計用地震動による地震力
  5.4 地震応答解析法
6. 免震型発電用原子炉施設の荷重組合せと許容限界
  6.1 免震装置の荷重の組合せと許容限界
   6.1.1 設計上考慮する荷重の種類
   6.1.2 荷重の組合せと許容限界
  6.2 建物・構築物の荷重の組合せと許容限界
  6.3 機器・配管系の荷重の組合せと許容限界
7. 免震型発電用原子炉施設の各部の設計
  7.1 免震装置の設計
   7.1.1 積層ゴム免震要素の設計
   7.1.2 ダンパの設計
   7.1.3 健全性評価
   7.1.4 耐久性
  7.2 建物・構築物の設計
   7.2.1 構造計画
   7.2.2 健全性評価
  7.3 機器・配管系の設計
   7.3.1 基本事項
   7.3.2 構造計画
   7.3.3 設計用地震力
   7.3.4 地震応答解析
8. 免震装置の品質管理と維持管理
  8.1 品質管理
  8.2 維持管理

参考資料1 積層ゴム免震要素の設計例(その1)
1.ゴム材料
2.要素設計用材料定数
3.設計例

参考資料2 積層ゴム免震要素の設計例(その2)
1.ゴム材料
2.要素設計用材料定数
3.設計例

参考資料3 鋼材ダンパの設計例
1.使用材料
2.設計条件
3.設計法
4.設計上の留意事項

参考資料4 免震装置の特性が応答に及ぼす影響の評価例
1.積層ゴム免震要素特性の変動率と応答値の関係
2.積層ゴム免震要素の鉛直剛性の変化が応答へ与える影響
3.積層ゴム免震要素における設計用軸応力度σの組合せ評価手法
4.鉛プラグ入り積層ゴムの熱的特性が応答に及ぼす影響

参考資料5 積層ゴム免震要素に対する線形限界及び終局限界の検討例
1.電力中央研究所によるFBR免震システム検証試験
2.次世代軽水炉免震開発関連の電力共通研究
3.JAEAによる厚肉積層ゴムの実験的研究

参考資料6 免震原子炉建屋の地震応答解析例
1.設計レベルの多質点系モデルによる地震応答解析例
2.設計レベルの質点系と3次元FEMの地震応答解析比較例
3.基礎版モデルによる積層ゴムの応力評価

参考資料7 免震建屋と耐震建屋の非線形応答に関する検討例
1.免震建屋と耐震建屋における弾性応答と弾塑性応答の比較
2.免震建屋と耐震建屋における耐震余裕度の比較

参考資料8 設計における想定を超えた地震に関する検討例
1.免震装置の試験並びに免震装置特性のモデル化及びシミュレーション解析
2.建屋モデルの地震応答解析
3.免震装置の終局レベルに対する接合部及びペデスタルの検討例
4.免震装置の終局レベルに対する取付け部及びペデスタルの試験

参考資料9 機器・配管系の構造計画
1.機器・配管系の構造計画例
2.地震感知装置
3.免震建屋での耐雷設計

参考資料10 渡り配管の試験結果
1.はじめに
2.FBRの振動試験例
3.軽水炉の加振試験例

参考資料11 渡り配管の多入力解析による設計手法
1.はじめに
2.渡り配管の設計に適用可能な代表的な多入力解析法
3.渡り配管への多入力解析法適用時の考慮事項と設計法への反映方法
4.渡り配管の設計に用いる多入力解析手法の例

参考資料12 荷重の合成方法と等価繰返し回数
1.はじめに
2.多入力応答スペクトル解析における荷重合成方法
3.等価繰返し回数の算出例

参考資料13 免震装置の品質管理と維持管理
1.品質保証体系
2.免震装置特性確認試験
3.免震装置の製造時品質管理
4.免震装置の維持管理

巻頭言

 本指針は上部構造(建物・構築物)の下部に免震装置を設置し,全体構造の固有周期を地震動が卓越する周期より長周期化するとともに,減衰機構を付加することにより上部構造に作用する地震力の低減をはかる免震構造に関するものである。
 (社団法人[当時、以下(社)])日本電気協会の耐震設計分科会では,(財団法人[当時])電力中央研究所で作成した「高速増殖炉免震設計技術指針(案)」を踏まえて,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日 原子力安全委員会決定)」(以下、「耐震審査指針(1981)」という)の基本的な考え方に基づくことを基本方針として,特に原子炉施設固有の安全性に関する要求と免震構造の特性を考慮して検討を進め,2000年に発電用原子炉施設全般を対象とする本指針を制定した。
 その後,耐震審査指針(1981)は,耐震技術に関する最新の知見を取り入れるよう高度化の検討がなされ,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(平成18年9月19日原子力安全委員会決定)」(以下、「耐震審査指針(2006)」という)として改訂された。(社)日本電気協会では,それまでの「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601)」の規程化を進め,「原子力発電所耐震設計技術規程(JEAC4601-2008)」としてまとめた。また,2007年新潟県中越沖地震における教訓を踏まえ,複数の原子力発電所サイトで緊急時対策所を内蔵する免震事務所棟が建設されてきている。さらに,2008 年度からは,(財団法人[当時])エネルギー総合工学研究所を実施主体とした経済産業省資源エネルギー庁の補助事業として次世代軽水炉等技術開発(2011年度より実施主体はメーカーに変更,2012年度より発電用原子炉等安全対策高度化技術開発[プラント安全性高度化]に変更)に関わる国のプロジェクト(実施形態は電力,メーカー及びエネルギー総合工学研究所による共同研究)が開始され,基礎免震方式を基本とした技術開発の成果が2015年度にまとめられた。
 2011年3月11日には東北地方太平洋沖地震が発生し,東北仙台地域における一般の免震建築物において免震部と非免震部の渡り部,免震装置の取付部等に軽微な損傷が観測されたものの,免震建築物として期待される免震効果を発揮した。一方,同地震の津波によって,東京電力㈱福島第一原子力発電所が被災したのを契機に,原子力規制委員会が発足し,事故の反省や国内外の指摘を反映して「原子炉等規制法」等が改正された。(以下,「新規制基準」という)
 その後,「原子力発電所耐震設計技術規程(JEAC4601-2008)」は新規制基準等を反映し「原子力発電所耐震設計技術規程(JEAC4601-2015)」として改定された。
 このような状況を踏まえ,(社)日本電気協会の耐震設計分科会では,本指針について新規制基準との整合や2011年東北地方太平洋沖地震等から得られた知見を反映すると共に,次世代軽水炉等技術開発及び発電用原子炉等安全対策高度化技術開発で実施された,実大・縮小モデルの部材を用いた免震装置及び免震・非免震部をつなぐ渡り配管の振動台試験や動的加力実験の最終的な成果等の最新知見を取り入れた改定作業を進めてきた。加力実験等により得られる免震装置の力学的特性は普遍的であるものの,渡り配管を含めた機器・配管系の耐震評価法はJEAC4601-2015に準拠しまとめていることから,現時点で高速増殖炉施設へ直接的に適用することは困難なところもあり,JEAC4601-2015及び新規制基準との整合も考慮し,本指針の適用範囲を発電用軽水型原子炉施設とした。ただし,本指針の基本的な考え方は,発電用軽水型原子炉施設以外の原子炉施設及び重大事故等対処施設を含むその他の原子力関係施設の設計においても参考となるものである。
 本改定版は,現時点で得られた知見については最大限の範囲で反映を図っているが,新規制基準に係わる適合性審査は,現在も継続して実施されているところであり,その審査の過程で示される知見については,継続的な取り組みによる新たな研究成果と合わせて適宜速やかに見直しを加えていく方針である。
 ここに,検討及び審議に参加してご協力いただいた関係各委員の方々及び関係諸機関の方々,そして特にご尽力いただいた原案作成者,耐震設計分科会のもとに設けられた建物・構築物検討会及び機器・配管系検討会の主査・幹事の方々に厚くお礼申し上げる。

令和元年6月

原子力規格委員会
耐震設計分科会
分科会長 久保 哲夫

改定履歴
制  定
平成12年7月
第1回改定
平成25年5月20日
第2回改定
令和元年6月21日
正誤表
公衆審査
JEAG4614-2019
期間:平成31年4月22日
    〜令和元年6月21日
結果:資料請求者0名
意見送付者0名
質疑・意見対応
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