原子力発電所の設計段階並びに運転段階において,発電所で働く放射線業務従事者並びに一般公衆が関係法令に定める線量限度を超えないよう,また無用の放射線被ばく防止のために,放射線遮へい壁の設置及び放射線管理区域の設定に関する遮へい設計の方法及び考え方を示している。
1.序 論
1.1 目 的
1.2 適用範囲
2.関連法規など
2.1 関連法令,規定及び規格
2.2 関係指針類
3.設計上の線量目標値
4.遮蔽設計条件
4.1 遮蔽設計及び遮蔽設計区分
4.1.1 遮蔽設計
4.1.2 遮蔽設計区分
4.2 遮蔽体の種類及び設計条件
4.2.1 遮蔽体の種類
4.2.2 遮蔽設計の条件
4.3 遮蔽体設置の方針
4.4 直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線による線量の評価の方針
4.5 放射性雲中の放射性物質からのガンマ線及び地表面に沈着した放射性物質からのガンマ線による線量の評価の方針
5.遮蔽計算
5.1 遮蔽設計の手順
5.2 線源強度
5.2.1 通常運転時の線源
5.2.2 事故時の線源
5.3 遮蔽計算
5.3.1 遮蔽計算コード
5.3.2 遮蔽計算モデル
5.3.3 遮蔽計算パラメータ
参考文献
原子力発電所で放射線業務に従事する作業者,並びに原子力発電所周辺の一般公衆が原子力発電所の運転に起因して放出される放射線によって,
無用の放射線被ばくを防止することはもちろん,放射線業務従事者が受ける放射線の量を,合理的に達成できる限り低くするよう原子力発電所の設計段階,
及び運転段階における放射線遮蔽の設置,並びに放射線管理区域の設定は極めて重要であります。
わが国の原子力発電所における放射線遮蔽に関する技術基準は「発電用原子力設備に関する技術基準」(通商産業省令第62号)に定められていましたが,
原子力発電所の放射線遮蔽設計について具体的に言及した指針・解説が整備されていなかったことから,2003年5月,「原子力発電所放射線遮へい設計指針
JEAG4615-2003」を新規に制定しました。
2010年には学協会規格に対する国による技術評価において,同指針の内容は当該技術基準の要求事項について具体的仕様を明確化しているものであるとの評価
がなされ,「原子力発電所放射線遮へい設計規程JEAC4615-2008」として制定しました。
2011年,東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し,その後,国による規制基準等が改正され,いくつかの既設プラントではそれに伴う
バックフィット審査が実施(又は実施中)されてきました。放射線遮蔽に対する基本的な考え方に変更はないものの,特に重大事故等時に対する要求事項が
整理されてきたことから今回の改定を実施しました。
審議に際し留意した事項は,以下のとおりです。
1.2010年度に原子力安全基盤機構(当時)から提出された技術評価書において
「原子力発電所放射線遮へい設計規程JEAC4615-2008」に対しての指摘事項を
反映する。
2.2015年3月に日本原子力学会より「放射線遮蔽ハンドブック-基礎編-」が発行
されたため,本文献の取り込みを行う。
3.福島第一原子力発電所事故の教訓を活かし,最新の法規等に基づく改定を行う。
特に,制御室及び緊急時対策所などの遮蔽設計について,原子力規制委員会に
よる新規制基準への適合性の確認や関連規格の改定に合わせた対応を行う。
最後に,本規程の制定にあたり絶大な助力を賜りました関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々など関係各位に深く感謝する次第であります。
令和2(2020)年1月
原子力規格委員会
放射線管理分科会
分科会長 中村 尚司