原子力発電所のヒューマンマシンインタフェースについて監視及び操作上要求される機能が正しく実現されるようヒューマンマシンインタフェースの開発及び設計に関する基本的事項を示している。
1. 序 論
2. 本指針の位置づけ及び適用範囲
3. 本指針の構成
4. 用語の定義
5. 機能と設計に関する要件
5.1 機能に関する要件
5.2 設計に関する要件
5.2.1 情報体系
5.2.2 情報表示
5.2.3 制御器及び操作器
5.2.4 警報装置
5.2.5 大型表示装置
5.2.6 運転支援装置
5.2.7 作業空間
5.2.8 制御盤に配備される器具
6. 開発過程と製作設計過程
6.1 標準的な開発過程と製作設計過程
6.2 開発目標
6.3 開発過程
6.3.1 機能要求過程
6.3.2 標準設計過程
6.4 製作設計過程
6.5 検証及び妥当性確認過程
〔解 説〕
1979年に米国スリーマイルアイランド原子力発電所で発生した事故を契機に,「運転員の誤操作及び誤判断の防止」の観点から人間工学に関する研究が進み,プラント設備の監視性及び操作性を高めるための種々の工夫がヒューマンマシンインタフェース設計へ取り入れられ,その後も,エレクトロニクス技術の目覚ましい進歩及び運転経験の蓄積により,CRTを用いた集約監視,運転操作の自動化の実現,さらには画面タッチ操作などの新しいインタフェース技術の導入など,ヒューマンマシンインタフェース設計へ計算機が大幅に取り入れられてきております。
このような背景から,中央制御室に係る人間工学的知見のうち,主に計算機を用いてプラント設備の監視及び操作が行えるように設計された中央制御室の計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの設備面での開発及び設計に関する実施方法を定めることを目的に,2005年に本指針を制定しました。その後,計算機化されたヒューマンマシンインタフェースは,様々な原子力発電所に適用されてきており,設計・許認可・運転・保守における経験や実績,新潟県中越沖地震での中央制御室の挙動への対応,及び本指針の関連技術基準・指針である国外規格・基準類や国内指針等の更新を踏まえて,2013年に本指針を改定しました。
一方,国外においては,プラントの安全の維持に対して必要となる機能要件を定義し,そこから必要な監視,操作に対する個別要件(設備に対する要件,体制・要員に対する要件等)を特定した上で,これらをインプットとして,ヒューマンマシンインタフェースの設計,手順書の設計及び教育訓練計画の開発を実施していくというアプローチが取られております。このような状況に鑑み,産業界においても,人間工学を体系的に適用する設計・開発活動の枠組みとそれに基づく具体的な設計・開発活動の実践に関する指針として,「原子力発電所における設計・開発に人間工学を体系的に適用するための指針」(JEAG 4641-2024)(以下,「JEAG 4641」という。)を制定しました。
今回の改定では,JEAG 4641の制定に伴い,本指針とJEAG 4641との関係を明確にし,その観点から必要な改定を行うこと,及び前回改定以降の関連規格や指針の改定を反映することを目的として本指針を改定しました。
具体的には,JAEG 4641の対象範囲との整合性に鑑み,本指針の適用範囲を,中央制御室のみではなく,JEAG 4641の適用範囲としている,中央制御室,緊急時対策所,緊急時制御室,中央制御室外原子炉停止盤,現場制御盤,可搬設備等にも拡大しております。また,計算機化されたヒューマンマシンインタフェースだけでなく,ハードウェアタイプのヒューマンマシンインタフェースにも適用するよう適用範囲を見直しております。
本指針の改定に当たって,関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝いたします。
2024年8月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 高田 孝