日本電気協会

原子力規格委員会

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JEAC4622-2009
原子力発電所中央制御室運転員の事故時被ばくに関する規程

概 要

 原子力発電所の中央制御室は,事故時においても運転員が立ち入り,一定期間滞在できるようにする必要がある。本規程は,中央制御室運転員の事故時被ばくに係る放射線防護措置の妥当性の確認方法及びこの被ばく評価に用いる空気流入率を確認するための空気流入率測定試験に関する基本的事項を規定している。

目 次

1. 総則
1.1 目的
1.2 適用範囲
1.3 関連法規
1.3.1 関連法令,指針
1.3.2 関連規程等
1.4 用語の定義

2. 中央制御室運転員の事故時被ばく評価手法
2.1 評価の基本的要件
2.1.1 想定事故
2.1.2 被ばく経路
2.1.3 判断基準
2.2 大気中への放出量の評価
2.3 大気拡散の評価
2.3.1 放射性物質の大気拡散
2.3.1.1 大気拡散の計算式
2.3.1.2 原子炉施設周辺の建屋の影響の有無による放射性物質の拡散の違いと具体的な計算条件
2.3.2 相対濃度(χ/Q)
2.3.3 相対線量(D/Q)
2.4 建屋からの直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線の評価
2.4.1 直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線の線源強度の計算
2.4.2 直接ガンマ線の計算
2.4.3 スカイシャインガンマ線の計算
解説-2
2.5 中央制御室運転員の事故時被ばく評価
2.5.1 建屋内線源強度
2.5.2 放射性物質の大気中の拡散
2.5.3 中央制御室内の放射性物質濃度
2.5.4 建屋等の遮へい効果
2.5.5 評価点
2.5.6 運転員の交替を考慮した被ばく

3. 中央制御室の空気流入率測定試験
3.1 試験目的
3.2 試験対象範囲
3.3 計測器
3.4 試験前必要条件
3.4.1 機器の状態
3.4.2 試験に当たっての遵守事項
3.4.2.1 試験前の中央制御室バウンダリの構成方法
3.4.2.2 気密性を向上するための諸対策の実施
3.4.2.3 トレーサガスの特性の確認
3.4.2.4 測定結果へ影響を与える作業の規制
3.5 試験方法
3.6 判定基準

【解 説】
【解説1.1】中央制御室換気空調設備
【解説1.2】中央制御室バウンダリ
【解説1.3】トレーサガス
【解説2.1】判断基準
【解説2.2】想定する事故時の放射性物質の放出
【解説2.3】建屋の影響がある場合の評価すべき方位
【解説2.4】建屋の影響がない場合の長時間平均の処理式を,建屋の影響がある場合に
     適用することが適切でない理由
【解説2.5】被ばく評価の入力条件として用いる空気流入率
【解説3.1】試験方法
【解説3.2】管理目標値
【付属書(規定)】中央制御室運転員の事故時被ばく評価方法及び空気流入率測定試験手順

巻頭言

 原子力発電所の制御室(以下,中央制御室)は,通常運転時はもとより事故時においても,プラントの運転状況の把握や各種の運転操作を行うために必要不可欠な設備ですが,特に事故時には事故の収束まで運転員が中央制御室内にとどまり,安全に各種の操作を行えるように運転員の居住性に配慮した設備である必要があります。
 我が国には,中央制御室の居住性に関する指針として,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年改訂)の指針43「制御室の居住性に関する設計上の考慮」があり,中央制御室に求められる「火災防護」「放射線防護」「有毒ガス防護」といった設計要求が規定されております。なお上記指針は,昭和45年に我が国で初めて安全審査指針が策定されて以降米国スリーマイルアイランド(TMI)事故での知見を踏まえた改訂を経て,現在に至ったものであります。
 しかしながら,我が国にはこれまで,中央制御室の居住性に関する標準的な検証手法が存在せず,TMI事故以降,電気事業者による自主的な評価・検証が行われていました。
 このような状況の中で,日本電気協会は,平成17年に原子力安全・保安院から米国Generic Letter2003-Ol"Control Room Habitability"に応じた国内民間規格の整備に関する依頼を受けました。そこで,原子力規格委員会の下部組織である安全設計分科会の下の「安全設計指針検討会」にて,中央制御室の居住性のうち「放射線防護」に係る標準的な評価手法の検討を開始しました。
 検討にあたっては,国内でこれまで実施されてきた評価手法の他,米国Regulatory Guide,国内外の学協会規格を確認しました。その結果,被ばく評価については国内電気事業者でのこれまでの評価手法に米国最新知見を取り込むこと,被ばく評価に用いる空気流入率を確認するためには空気調和・衛生工学会規格及び米国材料試験協会規格の知見を取り込むことが,中央制御室の居住性のうち「放射線防護」の妥当性を検証する手法として適切かつ有効と考え,これらの検証上考慮すべき事項及び推奨される方法として本規程をとりまとめました。
 本規程は,原子力発電所の中央制御室の遮へい設計,換気空調設計を担当する製造者において,設計方針の決定を助けるものとして使用される他,電気事業者においても,中央制御室運転員の事故時被ばくに係る放射線防護措置の妥当性の確認及びこの被ばく評価に用いる空気流入率を確認するための空気流入率測定試験のために使用されることが望まれます。
本規程の制定にあたって,関係官庁,電力会社,メーカ及び委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝する次第であります。

平成21年6月

原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 吉川榮和

改定履歴
制  定
平成21年6月23日
正誤表
公衆審査
JEAC4622-2009
期間:平成21年2月23日
    〜平成21年4月22日
結果:資料請求者1名
質疑・意見対応
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