原子力発電所の安全機能,重大事故等に対処する機能を有する電気・計装品が,供用期間中の劣化を踏まえ,設計基準事象時又は重大事故等時の環境条件において期待される機能を発揮し,維持できることを検証するうえで,考慮することが望ましい事項及び推奨される手法について示している。
1. 目的
2. 本指針の適用範囲(対象設備)
3. 関連法規,規格
4. 用語の定義
5. 検証計画
5.1 対象設備
5.2 目標とする検証寿命
5.2.1 劣化の影響
5.2.2 状態指標に基づく検証寿命の設定
5.3 検証対象事象
5.4 対象設備に期待される機能
5.5 対象設備に期待される機能を維持する期間
5.6 想定する運転条件
5.7 対象設備の保守,検査等
5.8 検証手法
6. 検証手法
6.1 型式試験
6.2 使用実績
6.3 解析
7. 検証要領
7.1 型式試験
7.1.1 試験体
7.1.2 試験計画
7.1.3 試験手順
7.1.4 初期機能試験
7.1.5 模擬劣化付与
7.1.6 事故時環境試験
7.1.7 最終機能試験
7.2 使用実績
7.3 解析
8. 検証寿命の再評価
9. 検証対象設備等の変更
解説
参考図
原子力発電所の安全性を確保するためには,適切な耐環境性能を有する設備を設置し,たとえ環境条件が著しく悪化する事象が発生したとしても,その性能を維持し,安全機能,重大事故等に対処する電気・計装品の機能が脅かされることのないようにしておく必要があります。
我が国には,耐環境性能に関する指針として,「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(令和4年9月26日一部改正)に,安全機能,重大事故等に対処する機能を有する設備に対する環境条件への適合設計が要求されており,耐環境性能が要求される対象設備に関するガイドラインとして,「安全機能,重大事故等に対処する機能を有する計測制御装置の設計指針」(JEAG4611-2021)等があります。
本指針は,耐環境性能を有する設備の耐環境性能に関する検証手法をより具体化,明確化することを目的に,原子力発電所の電気・計装品の耐環境性能の全般的な検証手法を示したIEEE Std. 323-2003 “IEEE Standard for Qualifying Class 1E Equipment for Nuclear Power Generating Stations” を参考にして,他に機器共通に適用できる事項を他のIEEE規格等から抽出し組み合わせることが,耐環境性能を検証する手法として適切かつ有効と考え,これらを検証上考慮すべき事項及び推奨される方法として,2008年に「原子力発電所の安全系電気・計装品の耐環境性能の検証に関する指針」として制定されたものです。また,2018年には最新の研究動向等を踏まえ,第1回の改定を実施しています。
(一社)日本電気協会原子力規格委員会では,本指針の改定に際し,2013年に施行された新規制基準のうち,重大事故等に対処する機能を有する電気・計装品を本指針の適用範囲に加え,関連した海外規格の最新の改定内容,国内外の最新の研究動向や運転経験について調査を行い,その結果を踏まえ,参照する関連法規,規格の更新や充実を行うと共に,最新の研究成果を踏まえた検証手法の記載の充実を行うことと致しました。なお,今後も継続して最新知見の調査,検討を進めて参ります。
この指針は,安全機能,重大事故等に対処する機能を有する電気・計装品を原子力発電所に供給する製造者において,開発検証手法のガイドとして使用される他,電気事業者においても,安全機能,重大事故等に対処する機能を有する電気・計装品の調達管理として適切な方法で製品が検証されていることを確認し,原子力プラントの高経年評価等で適切な検証が行われている設備であることを示すために使用されることが望まれます。
本指針の改定にあたって,関係官庁, 電力会社,メーカ並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝する次第であります。
2024年6月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 高田 孝