原子力発電所の中央制御室において,誤操作することなく適切に運転操作するために必要となる設備面の要求事項を規定している。本規程は,誤操作防止に関する設備面への要求事項等の本文と中央監視操作盤の盤面配置などの具体的な設計例等を記載した解説で構成している。
1.目的
2.適用範囲
3.関連法規,規格
4.用語の定義
5.誤操作防止に関する設備面の要求事項
5.1 中央制御室監視操作エリアの環境条件
5.2 中央制御室監視操作エリアにおける設備の配置及び作業空間
5.3 中央監視操作盤の盤面配置
5.4 中央監視操作盤の表示システム(警報システムを含む)
5.5 中央監視操作盤の制御機能
6.中央監視操作盤の新規設置にあたっての配慮
解 説
原子力発電所は,中央制御室でそのプラント設備を集中監視することにより運転されており,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)の中で,原子力発電所の中央制御室に対しては,運転員が誤りなく的確に監視及び操作できる設計であることが要求事項として示されております。
1979年に米国スリーマイルアイランド原子力発電所で発生した事故を契機に,運転員の誤操作及び誤判断防止の観点から,ヒューマンマシンインタフェースの人間工学に関する研究が各国で進められる中,エレクトロニクス技術の目覚ましい進歩と運転経験の蓄積を踏まえつつ,CRTを用いた集約監視運転操作の自動化などを実現するためのヒューマンマシンインタフェース設計に計算機が取り入れられるようになりました。その後全ディジタル型計装制御系統を採用した原子力発電所が世界各国で運転を開始し,最新の原子力発電所中央制御室の開発及び運転中の原子力発電所中央制御室の設備更新においては,計算機の大幅な導入により運転操作卓のコンパクト化,警報の階層化,運転操作の自動化範囲拡大などが実現されるとともに,大型スクリーンやVDU画面からのタッチ操作など,新しいヒューマンマシンインタフェース技術も積極的に採用されるようになり,これらの技術に対応する機能及び設計に関して考慮すべき要件を明確にし,指針化することが必要になりました。
このため(社)日本電気協会原子力規格委員会では,2005年に,主として計算機を用いてプラント設備の監視及び操作が行えるように設計された中央制御室の,計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの設備面での開発及び設計に関する実施方法を定めたJEAG4617「中央制御室の計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの開発及び設計に関する指針」を制定しました。
2006年1月,「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(省令62号)」の改正に伴い,第24条の2(原子炉制御室等)における「原子炉制御室には〜中略〜誤操作することなく適切に運転操作することができるように施設しなければならない」という要求事項の解釈として別記-8が引用されるようになり,原子炉制御室として,計算機化されたヒューマンマシンインタフェースが適用される以前の在来型制御盤を含め,誤操作することなく適切に運転操作するために必要とされる設備面の要求事項として,環境条件,作業空間,ハードウェア等に関する事項を明確にすることが示されました。
このたび,(社)日本電気協会原子力規格委員会は,IEC 60964,NUREG0700,NUREG 0711等の国外規格・指針の動向調査を行うとともに,国内の規制動向,運転経験を反映した原子力発電所中央制御室の設計開発の国内実績,本協会による他の規程や指針との整合性を勘案し,JEAG4617の改定を検討すると共に,新たに中央制御室における誤操作防止の設備設計に関する規程をJEAC4624「原子力発電所の中央制御室における誤操作防止の設備設計に関する規程」として制定し,中央制御室において誤操作することなく適切に運転操作するために必要となる設備面の要求事項を定めることとしました。
具体的には,誤操作防止に関する設備面への要求事項,中央監視操作盤の新設設置及び更新に当たっての配慮からなる本文と中央監視操作盤の盤面配置などの具体的な設計例などを記載した解説で構成しております。
本規程の制定に当たって,関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝する次第であります。
平成21年8月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 吉川榮和