本指針は,原子力事業者が原子力発電所に設置する緊急時対策所及び情報表示・伝送システム等の設計に係る要求事項,その補足及び推奨事項を示すことを目的として策定している。
今回の改定では,福島第一原子力発電所事故の教訓として各種報告書・提言・知見や福島第一原子力発電所以外の被災プラントの教訓,平成25年7月に施行された新規制基準,海外規制等を反映し,内容を大幅に見直した。
1.目的
2.適用範囲
3.関連法規,規格
4.用語の定義
4.1 運転時の異常な過渡変化
4.2 設計基準事故
4.3 重大事故等
4.4 緊急時
4.5 情報表示・伝送システム等
4.6 安全パラメータ表示システム(SPDS)
4.7 オフサイトセンター(OFC)
4.8 原子力施設事態即応センター
4.9 原子力事業所災害対策支援拠点
4.10 緊急時対策所支援施設
4.11 緊急時対策支援システム(ERSS)
4.12 原子力事業所内情報等伝送設備
4.13 非常用通信機器
4.14 原子力防災管理者
4.15 原子力防災要員
4.16 関係要員
5.緊急時対策所の設計
5.1 想定する事象
5.2 緊急時対策所の機能
5.3 緊急時対策所の安全機能の重要度分類
5.4 緊急時対策所の設置場所
5.5 緊急時対策所の広さ
5.6 緊急時対策所の耐震性
5.7 緊急時対策所の火災防護
5.8 緊急時対策所の居住性
5.9 緊急時対策所の電源設備
5.10 安全パラメータ表示システム(SPDS)
5.11 原子力事業所内情報等伝送設備
5.12 非常用通信機器
5.13 テレビ会議システム
解説
参考資料
原子力発電所の緊急時対策所は,1979年の米国スリーマイルアイランド2号炉の事故の教訓も踏まえ設置されることとなり,1986年に民間自主規格として(社)火力原子力発電技術協会「原子力発電所緊急時対策所の設計指針TNS-G2705-1986」が制定されました。その後,1999年の(株)ジェー・シー・オー(JCO)臨界事故を契機に新たに制定された「原子力災害対策特別措置法」では,事業者に原子力防災組織の設置と必要な原子力防災資機材(非常用通信機器等)の整備が要求され,各事業者は原子力事業者防災業務計画に基づき緊急時対策所を活用することとしています。また,2007年の新潟県中越沖地震の教訓として,緊急時対策所へのアクセス性や通信機能の強化等,地震への考慮が求められました。
このため,(社)日本電気協会では2010年に,(社)火力原子力発電技術協会の「原子力発電所緊急時対策所の設計指針」を参考にしつつ,原子力災害対策特別措置法や大規模地震時の要求事項を整理し,これらを考慮した原子力発電所緊急時対策所の具体的な設計指針として「JEAG 4627-2010原子力発電所緊急時対策所の設計指針」(初版)を制定しました。
そのような中,2011年3月に福島第一原子力発電所事故が発生し,この対策として原子力規制委員会により2013年7月に新規制基準が施行されました。
今回の改定は,福島第一原子力発電所事故に係る国内外からの各報告書から抽出された緊急時対策所の事故対応環境と機能の強化に関する要求や新規制基準の要求への対応を検討し,内容の見直しを行ったものです。また,PWR電力及びBWR電力の緊急時対策所に係る新規制基準適合性審査における最新の知見についても可能な限り反映しました。
なお,各事業所において,緊急時対策所の設置場所及び機器配置の違いにより,画一的な設計条件とできないものについては,参考資料として取り纏めました。
今後,シビアアクシデント研究などの新たな知見が得られましたら,継続的に改善を図っていく必要があると認識しておりますので,関係される皆様の率直なご批判やご助言による追補や改定に努めたいと考えております。
最後に,本指針改定にあたり,絶大なご尽力をいただきました検討会,分科会の委員各位および事務局の方々をはじめとした関係者各位に,深く謝意を表します。
平成29年10月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 古田一雄