本要領は,軽水型発電用原子力設備の原子炉圧力容器の胴部を対象に,過渡事象中の非延性破壊について,事象の発生頻度や破壊現象に影響する種々の因子の統計的な不確実さ等を考慮して,確率論的破壊力学(Probabilistic Fracture Mechanics,PFM)に基づき非延性破壊の発生や亀裂が炉壁を貫通する破損頻度の計算を行うための標準的な要領を定めるものである。
PFM-1000 一般事項
PFM-1100 目的及び適用範囲
PFM-1200 用語の定義
PFM-1300 対象とする機器及び部位
PFM-1400 破損頻度計算手順の概要
PFM-2000 応力拡大係数の算出
PFM-2100 事象の選定
PFM-2200 温度分布の時刻歴
PFM-2300 応力分布の時刻歴
PFM-2400 溶接残留応力分布
PFM-2500 想定亀裂
PFM-2600 応力拡大係数
PFM-3000 破壊靭性の算出
PFM-3100 中性子照射量
PFM-3200 化学成分
PFM-3300 関連温度
PFM-3400 破壊靭性
PFM-3500 亀裂伝播停止破壊靭性
PFM-4000 不確実さのモデル化
PFM-5000 破損頻度の計算6
PFM-5100 計算手法
PFM-5200 破損の判定
PFM-5210 亀裂進展
PFM-5220 亀裂伝播停止
PFM-5230 亀裂貫通
PFM-5300 条件付破損確率
PFM-5310 条件付亀裂進展確率
PFM-5320 条件付亀裂貫通確率
PFM-5400 過渡事象の発生頻度
PFM-5500 破損頻度
PFM-5510 亀裂進展頻度
PFM-5520 亀裂貫通頻度
PFM-5600 信頼度
附属書目次
附属書A(規定):解析コードの検証方法
附属書B(参考):国内プラントに対する解析条件及び解析手法の例
附属書C(参考):過渡事象に関する解析条件例
解 説 目 次
(解説-PFM-1100-1)目的及び適用範囲
(解説-PFM-1100-2)確率論的破壊力学評価の適用
(解説-PFM-1300-1)対象とする機器及び部位
(解説-PFM-1400-1)破損頻度計算手順の概要
(解説-PFM-2100-1)事象の選定
(解説-PFM-2400-1)溶接残留応力分布
(解説-PFM-2500-1)想定亀裂
(解説-PFM-2600-1)応力拡大係数
(解説-PFM-3100-1)中性子照射量
(解説-PFM-3200-1)化学成分
(解説-PFM-3300-1)関連温度
(解説-PFM-3400-1)破壊靭性
(解説-PFM-3500-1)亀裂伝播停止破壊靭性
(解説-PFM-4000-1)確率変数の相関
(解説-PFM-4000-2)確率分布の打切り
(解説-PFM-5100-1)計算手法
(解説-PFM-5100-2)計算精度
(解説-PFM-5210-1)亀裂進展
(解説-PFM-5220-1)亀裂伝播停止
(解説-PFM-5230-1)亀裂貫通
(解説-PFM-5400-1)過渡事象の発生頻度
(解説-PFM-5510-1)亀裂進展頻度
(解説-PFM-5520-1)亀裂貫通頻度
(解説-PFM-5600-1)信頼度
附属書
(解説-附属書A-2000-1)機能の分類
(解説-附属書A-3000-1)確率変数の機能の検証
(解説-附属書A-4000-1)破損頻度計算の機能の検証
(解説-附属書A-5000-1)開発者以外の専門機関の参加
(解説-附属書A-6000-1)ベンチマーク解析の活用
(解説-附属書B-2000-1)PASCALを使用した国内プラントに対する解析事例
(解説-附属書C-1000-1)過渡事象の選定
(解説-附属書C-3000-1)過渡事象の履歴データの設定
原子炉圧力容器の健全性評価については,2016年に改定した「原子炉圧力容器に対する供用期間中の破壊靭性の確認方法」(JEAC 4206-2016)において,決定論的破壊力学に基づき,十分に大きな亀裂の想定や破壊靭性の下限で許容値を定めること等により保守的に評価する手法が定められています。一方,中性子照射脆化等の経年劣化を考慮した現実的耐力や裕度の比較評価を行えるように,リスク情報の活用が求められています。具体的手法としては、破壊現象に影響する種々のパラメータの不確実さを考慮して破損の頻度を定量的に評価できる確率論的破壊力学(PFM:Probabilistic Fracture Mechanics)の活用が期待されています。
本要領は,このような背景に基づき, PFMに関する最新の研究動向と知見を踏まえ,国内プラントの原子炉圧力容器に対してPFMに基づき破損頻度計算を行うための解析手順や破損の判定方法等の標準的な方法を定めることを目的として制定しました。
今後も,本要領を利用される皆様からのご助言も得ながら,PFMの解析事例や経験等の蓄積に基づき改定してまいります。
原子力発電設備の超音波探傷試験による欠陥検出及びサイジングに関する規程は本書のみであり,今後とも,本規程を利用される皆様のご助言も得ながら,改定を重ねてまいります。
平成30年9月
原子力規格委員会
構造分科会
分科会長 笠原 直人