原子力発電所の監視,操作に関わる設備設計,手順書の設計及び教育訓練計画の開発に対し,人間工学的観点からの推奨事項を体系的に整理し,人間工学プログラムの実施項目に関する指針を示している。本指針は,人間工学プログラムの実施項目についてまとめた本文と,各実施項目で求められるアウトプットの一例を示した附属書で構成している。
1.序 論
2.目 的
3.適用範囲
4.関連法規,規格
5.用語と略号
5.1 用語の定義
5.2 略号の定義
6.対象設備・要員・タスク・対象手順書・教育訓練
6.1 対象設備
6.2 要員
6.3 タスク
6.4 対象手順書・教育訓練
7.人間工学プログラム
7.1 人間工学プログラムの構成
7.2 プラント設計・開発への人間工学プログラム適用指針
8.設計開発計画
8.1 設計開発計画の目的
8.2 設計開発計画へのインプット
8.3 設計開発計画のアウトプット
8.4 人間工学プログラムの目標と範囲
8.4.1 人間工学プログラムの目標
8.4.2 仮定条件と制約
8.4.3 人間工学プログラム適用フェーズ
8.4.4 適用設備
8.4.5 対象手順書及び訓練
8.4.6 対象要員
8.5 人間工学チームと組織
8.5.1 責任
8.5.2 組織的な配置と権限
8.5.3 構成
8.6 人間工学プログラムの実施要領
8.6.1 一般的なプロセスの手順
8.6.2 プロセス管理ツール
8.6.3 人間工学とプラント設計活動との統合
8.6.4 人間工学プログラムのマイルストーン
8.6.5 人間工学プログラムの文書作成
8.6.6 請負業者の人間工学の取り組み
8.7 人間工学の課題の追跡調査
8.7.1 追跡調査システム
8.7.2 方法
8.7.3 文書作成
8.8 技術プログラム
8.8.1 人間工学プログラムの実施項目
8.8.2 スケジュール
8.8.3 人間工学要件の明示
8.8.4 人間工学プログラムが適用される対象の特定
8.8.5 プラント改造時の考慮事項
9.運転経験のレビュー
9.1 運転経験のレビューの目的
9.2 運転経験のレビューへのインプット
9.3 運転経験のレビューのアウトプット
9.4 運転経験のレビュー
9.4.1 運転経験のレビューの実施(特定,分析)
9.4.2 運転経験のレビュー結果の展開
10.機能分析と機能配分
10.1 機能分析と機能配分の目的
10.2 機能分析と機能配分へのインプット
10.3 機能分析と機能配分のアウトプット
10.4 機能分析
10.5 機能配分
10.6 プラントの改造時の考慮事項
11.重要なタスクの特定
11.1 重要なタスクの特定の目的
11.2 重要なタスクの特定へのインプット
11.3 重要なタスクの特定のアウトプット
11.4 重要なタスクの特定
11.5 重要なタスクの特定結果
11.6 特定した重要なタスクの適用範囲に関する考慮
11.7 重要なタスクの取り扱い
11.8 プラント改造時の考慮事項
12.タスク分析
12.1 タスク分析の目的
12.2 タスク分析へのインプット
12.3 タスク分析のアウトプット
12.4 タスク分析
12.4.1 分析範囲
12.4.2 対象タスクの選別
12.4.3 個別タスクの詳細記述
12.4.4 プラント改造時の考慮事項
13.要員の配置及び組織の分析
13.1 要員の配置及び組織の分析の目的
13.2 要員の配置及び組織の分析へのインプット
13.3 要員の配置及び組織の分析のアウトプット
13.4 要員の配置及び組織の分析
13.4.1 要員の配置
13.4.2 適用するプラント状態及び業務・タスク
13.4.3 継続的な要員の配置の再検討
14.対象設備の設計
14.1 対象設備の設計の目的
14.2 対象設備の設計へのインプット
14.3 対象設備の設計のアウトプット
14.4 対象設備の設計
14.4.1 対象設備に関する規格
14.4.2 対象設備の設計の考慮事項
14.4.2.1 中央制御室
14.4.2.2 中央制御室外原子炉停止盤
14.4.2.3 緊急時対策所
14.4.2.4 緊急時制御室
14.4.2.5 現場制御盤
14.4.2.6 可搬設備
15.対象手順書の設計
15.1 対象手順書の設計の目的
15.2 対象手順書の設計へのインプット
15.3 対象手順書の設計のアウトプット
15.4 対象手順書の設計
15.4.1 対象手順書の範囲
15.4.2 対象手順書の設計
15.4.3 検証及び妥当性確認
15.4.4 維持・更新計画
15.4.5 対象手順書の配備場所
16.教育訓練計画への反映事項の整理
16.1 教育訓練計画への反映事項の整理の目的
16.2 教育訓練計画への反映事項の整理へのインプット
16.3 教育訓練計画への反映事項の整理のアウトプット
16.4 教育訓練計画への反映事項の整理
16.4.1 体系的な教育訓練計画開発
16.4.2 教育訓練計画実施組織と資機材
16.4.2.1 教育訓練計画を運用・管理する組織と活動
16.4.2.2 訓練用資機材の開発
16.4.3 業務及び教育訓練に対する分析
16.4.3.1 教育訓練の分析対象項目
16.4.3.2 業務の遂行に必要な知識・技能等の抽出
16.4.4 教育訓練計画の開発
16.4.5 教育訓練の実施
16.4.6 教育訓練計画への反映事項の整理
17.設計・開発の検証及び妥当性確認
17.1 設計・開発の検証及び妥当性確認の目的
17.2 設計・開発の検証及び妥当性確認へのインプット
17.3 設計・開発の検証及び妥当性確認のアウトプット
17.4 設計・開発の検証及び妥当性確認
17.4.1 設計・開発の検証及び妥当性確認の実施計画
17.4.2 設計・開発の検証及び妥当性確認の実施体制
17.4.3 設計・開発の検証及び妥当性確認の実施内容
17.4.3.1 設計・開発の検証
17.4.3.2 設計・開発の妥当性確認
17.4.3.3 人間工学上の解決すべき課題
18.実装に向けた確認
18.1 実装に向けた確認の目的
18.2 実装に向けた確認へのインプット
18.3 実装に向けた確認のアウトプット
18.4 実装に向けた確認
18.4.1 実装する設計仕様の確認
18.4.2 検証及び妥当性確認で未確認の設計仕様の確認
18.4.3 人間工学に関する課題の確認
19.ヒューマンパフォーマンスの監視
19.1 ヒューマンパフォーマンスの監視の目的
19.2 ヒューマンパフォーマンスの監視へのインプット
19.3 ヒューマンパフォーマンスの監視のアウトプット
19.4 ヒューマンパフォーマンスの監視
19.4.1 ヒューマンパフォーマンスの監視プログラムの構築
19.4.2 ヒューマンパフォーマンスの監視プログラムの内容
1979年に米国スリーマイルアイランド原子力発電所で発生した事故を契機に,「運転員の誤操作及び誤判断の防止」の観点から人間工学に関する研究が進み,プラント設備の監視性及び操作性を高めるための種々の工夫がヒューマンマシンインタフェース設計へ取り入れられております。その後も,人間工学を考慮した設計・開発プロセスの構築に取り組んでおり,デジタル化を中心とした中央制御室の設計・開発の実績,他の規格との整合性等を考慮して,これまでに日本電気協会電気技術指針「中央制御室の計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの開発及び設計に関する指針」(JEAG 4617-2013)及び日本電気協会電気技術規程「原子力発電所の中央制御室における誤操作防止の設備設計に関する規程」(JEAC 4624-2009)をまとめ,計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの設備面での設計・開発に関する実施方法を定めております。
一方,国外においては,プラントの安全の維持に対して必要となる機能要件を定義し,そこから必要な監視,操作に対する個別要件(設備に対する要件,体制・要員に対する要件等)を特定した上で,これらをインプットとして,ヒューマンマシンインタフェースの設計,手順書の設計及び教育訓練計画の開発を実施していくというアプローチが取られております。注目すべきは,当該機能要件の定義及び特定は,制御盤インタフェース設計といったハードウェアのみではなく,運転手順書,教育訓練計画等のソフト面も含めていること,また,人間工学プログラムとして,原子力発電所の設計・開発プロセス全般に渡り,人間工学を体系的に適用していることです。
このような国外動向を踏まえて,国内においても原子力規制委員会から,人間工学設計開発に関する審査及び検査ガイド(令和3年4月7日制定)が発行されております。
上記のような状況に鑑み,国内産業界においても,ハードウェア面だけでなく,運転手順書,教育訓練プログラム等のソフト面も含めて,人間工学を体系的に設計・開発活動に展開するための指針を制定することとしました。本指針は,国内規制要件,国内関連規格,国外関連規格等を踏まえた上で,これまでの国内における人間工学に関する設計・開発プロセス(人間工学プロセス)を実務的な流れに沿って体系的に整理し,人間工学プログラムの整備とそれに基づく人間工学プロセスの実践に関する指針として制定したものです。
本指針の制定に当たって,関係官庁,電力会社,メーカ並びに委員の方々に絶大なご助力を賜りました。ここに関係各位に深く感謝致します。
2024年8月
原子力規格委員会
安全設計分科会
分科会長 高田 孝