電気技術規程・電気技術指針は,次の略称を使用しています。
・電気技術規程:JEAC (Japan Electric Association Code)
・電気技術指針:JEAG (Japan Electric Association Guide)
電気工作物の保安確保は,電気工作物設置者の自己責任に基づく自主保安が基本です。 電気事業法に基づく技術基準は,公共の安全を確保し,環境の保全を図ることを目的にした,電気工作物の工事,維持及び運用の基準ですが,保安確保に関しては,法令が必要とする最小限の技術的要件を定めたものであることを理解する必要があります。
そのため,技術基準では規定していない,電気工作物の工事,維持,運用の技術的細目や品質管理に係わる事項,また,材料,設計,施工,検査等の技術的細目などについては,実態上,民間の自主保安に委ねられることになります。したがって,技術革新等による最新の知見を反映し,技術的な細部を定めた民間規格があれば,国の技術基準と一体をなして運用されることにより,電気工作物のより一層の安全性の向上が期待されます。
また,民間規格には,最新の技術的知見を迅速に反映し,技術の標準化を促すとともに,国際標準との整合性を図ることにより,貿易に係る技術的障害を排除し,産業の発展及び国際貿易の促進に貢献することが期待されています。
電気技術規程・電気技術指針は,このような背景と必要性に基づき自主的に制定された民間規格です。これらは,技術基準や技術基準の解釈等の規定を踏まえ,その規定内容を解説するとともに,民間規格として必要な事項を補足,補完するなどにより,技術基準を遵守することはもちろんのこと,法令では明記されていない自主的規定や,必要に応じて電気事業法以外の法令の規定に関する事項を含めるなどにより,保安確保に万全を期すことができるよう努めています。
また,これら民間規格は,これを制定した委員会から技術基準の解釈等への引用要請を行うことにより,法令等に活用されることがあり,原子力分野については,国が技術的な妥当性を評価したうえで規制に活用することがあります。
「電気技術規程」は,工事規程,維持規程,検査規程等に細分され,それぞれの内容と性格に応じ規定事項の要求レベル(義務,勧告,推奨等)を明示し,運用に当たっての利便性なども考慮したものとなるように努めています。さらに,原子力分野については,守るべき判定基準を含むものとしています。
したがって,「電気技術規程」の内容はおおよそ次のようなものとして制定しています。
① 難解な表現となっているもの又は立法技術の点から抽象的な表現となっている技術基準の条項について,法令の記述形式にとらわれず,法令に定められている主旨を汲みとり,わかり易く表現した具体的なもの
② 新技術の開発,新製品の出現,社会情勢の変遷等により,技術基準の解釈に記述されていない方法により施設する場合や新しい資機材を使用して施設する場合に,それらが省令の技術基準を満足し「民間の自己責任としての運用」ができるようなもの
③ 技術基準の解釈等に明記されていない補足,補完的事項を記したもの
④ 運転,保守,工事,検査の際に参考となるもの
⑤ 原子力分野については,性能規定化された技術基準の具体的な仕様や実施方法を示す規定として,規制に活用されるもの
これに対し,「電気技術指針」は,今後,改良が期待される新技術に関することや保安上「規程」として制定することが必要と考えられるが研究開発課題である事項等,一律に定めることが困難又は不適当な数多くの事項がある場合の技術的内容を取り扱っています。
例えば次のような場合があげられます。
① 新技術に関する事項で「規程」とするためには諸外国の例を含めて実績,実例が数少ない場合
② 保安上必要な事項であるが,その方法,対策等について学説,方法論が必ずしも確立していないため,広く一般に適用するものとして「規程」とすることが困難な場合
③ 未解決,未確定な研究開発課題が含まれる事項がある場合
④ 社会情勢が急激に変化し,「規程」とすることが必ずしも適当でない場合
このように,大綱的には遵守すべき事項ではありますが,その方法,施策等について直ちに規程として運用するには至っていないと考えられる事項等について,「電気技術指針」として取りまとめています。
なお,「電気技術指針」は原則的には「電気技術規程」に準じて遵守されることが望ましいのですが,次の事項に留意して運用することが必要です。
① 実際の適用に当たって技術の進歩を阻害することのないように解釈すべきであること。
② 内容を十分理解して,設計,施工等に際して誤りの無いようにすること。
③ 指針に記載されていない事項,方法等であっても,それが保安上適切なものである場合は採用できること。
電気技術規程・電気技術指針は,常に更新されるべき生きた民間規格です。技術の進歩や社会情勢の変遷に応じて,適宜改定しています。
電気技術規程・電気技術指針は,関係各分野の多数の権威者の方々が参加され,多大な労力と時間をかけて慎重審議の結果,電気工作物の保安確保のために必要と認めた事項を取りまとめたものです。したがって,誰もが,これら規程・指針を尊重することによって,安全性の高い電気工作物が施設され,維持されることになります。
これら電気技術規程・電気技術指針は,わが国の電気技術の成果の一つであるとともに,電気保安に携わっておられる方々のための民間規格です。これら規程・指針の内容についてのご意見・ご要望がありましたら,日本電気協会技術部にお申し出ください。