本規程は,原子力施設の事業者が原子力施設の設計・建設段階から廃止措置段階において,原子力安全のための活動を実施する際の原子力安全のためのマネジメントシステムを規定したものです。
今回の改定では,事業者の自主的な改善努力によるパフォーマンスの向上に重点をおき,要求事項に対する具体的実施方法などを記載した適用ガイドを充実するとともに,リスクに基づく考え方を用いることで,本規程の目的とする原子力安全の達成・維持・向上を実現することを基本的な考えとしています。
また,JEAC4111-2013における福島第一原発事故の教訓反映を継承し,原子力安全の達成・維持・向上に影響する,安全文化及び安全のためのリーダーシップについて,要求事項として具体化を図るとともに,「技術的,人的及び組織的要因の相互作用」を適切に考慮することを明確にしました。
なお,本規程を改定するにあたり,最新知見の反映として,2020年に制定された「原子力施設の保安のための業務に係る品質管理に必要な体制の基準に関する規則及び解釈」,国際原子力機関(IAEA)安全基準シリーズGSR Part2「安全のためのリーダーシップ及びマネジメント」,JIS Q 9001:2015,米国の原子力規制制度,原子力学会標準などを参考にしています。
第1部 序 論
0. はじめに
0.1 原子力安全のためのマネジメントシステムの基本的考え方
0.2 本規程における記載事項の構成
0.3 参考文献
1.目 的
2.適用範囲
3.定 義
第2部 要求事項
4.原子力安全のためのマネジメントシステム
4.1 一般要求事項
4.2 文書化に関する要求事項
4.2.1 一 般
4.2.2 品質マニュアル
4.2.3 文書管理
4.2.4 記録の管理
5.経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
5.2 原子力安全の重視
5.3 品質方針
5.4 計 画
5.4.1 品質目標
5.4.2 マネジメントシステムの計画
5.5 責任,権限及びコミュニケーション
5.5.1 責任及び権限
5.5.2 管理責任者
5.5.3 管理者
5.5.4内部コミュニケーション
5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一 般
5.6.2 マネジメントレビューへのインプット
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット
6.資源の運用管理
6.1 資源の提供
6.2 人的資源
6.2.1 一 般
6.2.2 力量,教育・訓練及び認識
6.3 インフラストラクチャ
6.4 作業環境
7.業務の計画及び実施
7.1 業務の計画
7.2 業務・原子力施設に対する要求事項に関するプロセス
7.2.1 業務・原子力施設に対する要求事項の明確化
7.2.2 業務・原子力施設に対する要求事項のレビュー
7.2.3 利害関係者とのコミュニケーション
7.3 設計・開発
7.3.1 設計・開発の計画
7.3.2 設計・開発へのインプット
7.3.3 設計・開発からのアウトプット
7.3.4 設計・開発のレビュー
7.3.5 設計・開発の検証
7.3.6 設計・開発の妥当性確認
7.3.7 設計・開発の変更管理
7.4 調 達
7.4.1 調達プロセス
7.4.2 調達要求事項
7.4.3 調達製品の検証
7.5 業務の実施
7.5.1 業務の実施の管理
7.5.2 業務の実施に関するプロセスの妥当性確認
7.5.3 識別及びトレーサビリティ
7.5.4 組織外の所有物
7.5.5 調達製品の保存
7.6 監視機器及び測定機器の管理
8.評価及び改善
8.1 一 般
8.2 監視及び測定
8.2.1 原子力安全の達成
8.2.2 内部監査
8.2.3 プロセスの監視及び測定
8.2.4 検査及び試験
8.3 不適合管理
8.4 データの分析及び評価
8.5 改 善
8.5.1 継続的改善
8.5.2 是正処置
8.5.3 未然防止処置
第3部 適用ガイド及び解説
適用ガイド
4.原子力安全のためのマネジメントシステム
4.1 一般要求事項
4.2 文書化に関する要求事項
4.2.1 一 般
4.2.2 品質マニュアル
4.2.3 文書管理
4.2.4 記録の管理
5.経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
5.2 原子力安全の重視
5.3 品質方針
5.4 計 画
5.4.1 品質目標
5.4.2 マネジメントシステムの計画
5.5 責任,権限及びコミュニケーション
5.5.1 責任及び権限
5.5.2 管理責任者
5.5.3 管理者
5.5.4内部コミュニケーション
5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一 般
5.6.2 マネジメントレビューへのインプット
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット
6.資源の運用管理
6.1 資源の提供
6.2 人的資源
6.2.1 一 般
6.2.2 力量,教育・訓練及び認識
6.3 インフラストラクチャ
6.4 作業環境
7.業務の計画及び実施
7.1 業務の計画
7.2 業務・原子力施設に対する要求事項に関するプロセス
7.2.1 業務・原子力施設に対する要求事項の明確化
7.2.2 業務・原子力施設に対する要求事項のレビュー
7.2.3 利害関係者とのコミュニケーション
7.3 設計・開発
7.3.1 設計・開発の計画
7.3.2 設計・開発へのインプット
7.3.3 設計・開発からのアウトプット
7.3.4 設計・開発のレビュー
7.3.5 設計・開発の検証
7.3.6 設計・開発の妥当性確認
7.3.7 設計・開発の変更管理
7.4 調 達
7.4.1 調達プロセス
7.4.2 調達要求事項
7.4.3 調達製品の検証
7.5 業務の実施
7.5.1 業務の実施の管理
7.5.2 業務の実施に関するプロセスの妥当性確認
7.5.3 識別及びトレーサビリティ
7.5.4 組織外の所有物
7.5.5 調達製品の保存
7.6 監視機器及び測定機器の管理
8.評価及び改善
8.1 一 般
8.2 監視及び測定
8.2.1 原子力安全の達成
8.2.2 内部監査
8.2.3 プロセスの監視及び測定
8.2.4 検査及び試験
8.3 不適合管理
8.4 データの分析及び評価
8.5 改 善
8.5.1 継続的改善
8.5.2 是正処置
8.5.3 未然防止処置
解説
0. はじめに
3.定 義
4.原子力安全のためのマネジメントシステム
4.1 一般要求事項
4.2 文書化に関する要求事項
4.2.1 一 般
4.2.2 品質マニュアル
4.2.3 文書管理
4.2.4 記録の管理
5.経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
5.2 原子力安全の重視
5.3 品質方針
5.4 計 画
5.4.1 品質目標
5.4.2 マネジメントシステムの計画
5.5 責任,権限及びコミュニケーション
5.5.1 責任及び権限
5.5.2 管理責任者
5.5.3 管理者
5.5.4内部コミュニケーション
5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一 般
5.6.2 マネジメントレビューへのインプット
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット
6.資源の運用管理
6.1 資源の提供
6.2 人的資源
6.2.1 一 般
6.2.2 力量,教育・訓練及び認識
6.3 インフラストラクチャ
6.4 作業環境
7.業務の計画及び実施
7.1 業務の計画
7.2 業務・原子力施設に対する要求事項に関するプロセス
7.2.1 業務・原子力施設に対する要求事項の明確化
7.2.2 業務・原子力施設に対する要求事項のレビュー
7.2.3 利害関係者とのコミュニケーション
7.3 設計・開発
7.3.1 設計・開発の計画
7.3.2 設計・開発へのインプット
7.3.3 設計・開発からのアウトプット
7.3.4 設計・開発のレビュー
7.3.5 設計・開発の検証
7.3.6 設計・開発の妥当性確認
7.3.7 設計・開発の変更管理
7.4 調 達
7.4.1 調達プロセス
7.4.2 調達要求事項
7.4.3 調達製品の検証
7.5 業務の実施
7.5.1 業務の実施の管理
7.5.2 業務の実施に関するプロセスの妥当性確認
7.5.3 識別及びトレーサビリティ
7.5.4 組織外の所有物
7.5.5 調達製品の保存
7.6 監視機器及び測定機器の管理
8.評価及び改善
8.1 一 般
8.2 監視及び測定
8.2.1 原子力安全の達成
8.2.2 内部監査
8.2.3 プロセスの監視及び測定
8.2.4 検査及び試験
8.3 不適合管理
8.4 データの分析及び評価
8.5 改 善
8.5.1 継続的改善
8.5.2 是正処置
8.5.3 未然防止処置
附属書-1 根本原因分析に関する要求事項
附属書-2 安全文化及び安全のためのリーダーシップに関する適用ガイド
附属書-3 改善措置活動(CAP)に関する適用ガイド
附属書-4(参考)品質マネジメントシステムに関する標準品質保証仕様書
国が品質保証に関する要求事項を定め,事業者はこれを満たすシステムを構築し,運用・改善を図るという枠組みの下,JEAC 4111-2003を制定してから約20年が経過する。この間,2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故(以下,「福島第一原発事故」という。)を経験し,原子力に関わる全員が衝撃を受けるとともに,なぜこの事故を防げなかったかについて深く反省することを迫られた。
JEAC4111の2013年の改定は,福島第一原発事故に関する様々な事故調査結果において,安全マネジメントに関わる人的・組織的要因の問題が指摘されていることから,品質保証に携わる者としての反省をこめて行った。今回の改定では,この延長線上に沿って国内外の最新知見を反映するとともに,新たな検査制度の前提となる事業者の自主的な取組を促進するために要求事項に対する具体的なガイドを提示した。改定に当たっては,特に以下の点に留意した。
(1) JEAC 4111の位置づけは,従来「法令に基づき規定される原子力発電所の保安活動における品質保証に関する要求事項を具現化したもの」であったが,2013年の改定でこれを「国際標準を参照し,事業者の行う原子力安全の達成・維持・向上を強固にするための活動に必要な事項を規定したもの」に変更した。すなわち,規制への適合だけではなく,原子力安全の達成のために自主的に取り組むべき活動は何かを定めた。
(2) IAEAの品質保証に関する基準は,JEAC 4111として発刊以来、その基礎として位置づけ,グレード分けの適用,設計検証の第三者による実施,検査員の独立性の程度を定めることなどを要求事項として取り入れてきた。しかし,福島第一原発事故に対する反省として,世界最高水準の安全を達成するために,「最新の国際標準を参照する」ことが課題となった。
(3) 今回の改定に際しては,最新知見の反映として,2020年4月に施行された「原子力施設の保安のための業務に係る品質管理に必要な体制の基準に関する規則(以下,「品管規則」という。)」及び解釈,国際原子力機関(IAEA)安全基準シリーズ「GSR Part2:安全のためのリーダーシップ及びマネジメント(以下,「GSR Part2」という。)」,JIS Q 9001:2015,米国の原子力規制制度,日本原子力学会標準などを参考にした。特に,品管規則及び解釈を満たす基本要求事項と,更に自主的安全性向上の観点から追加要求事項を定めて,安全性向上に寄与するよう検討した。
(4) JEAC 4111は,安全文化を基礎とした「原子力安全のためのマネジメントシステム」であるが,マネジメントシステムを通して安全文化を醸成するとともに,マネジメントシステムに安全のためのリーダーシップを織り込んで運用するというIAEAのGSR Part 2の基本概念を反映している。その意図を明確にする観点から,本規程の名称はJEAC 4111-2013から「原子力安全のためのマネジメントシステム規程」としている。
(5) 改定に当たり参考にしたJIS Q 9001は,2015年に大幅な改正が行われているが,その根底には「計画をしっかり立てること」があり,従来との大きな相違点となっている。具体的には,計画を立てる際に過去の知見に基づいてリスクを検討し,計画(品質目標,品質目標を達成するための計画等)を従来にも増して意図した結果を達成する蓋然性の高いものにすること,その上で,達成できなかった場合には,計画を立てる際に不足していた部分を明らかにし継続的に改善することにより,計画をより確かなものにすることが要求されている。今回のJEAC4111の改定においては,この意図を反映し,リスク情報の活用を含め計画の重要性を本規程全体で明確にするようにした。
(6) 従来,JEAC 4111は要求事項を規定し,適用ガイドはJEAG 4121に記載する構造であったが,今回の改定では,適用ガイド及び関連する解説をJEAC 4111に併せて記載するという構造上の変更を行った。事業者の原子力施設の運営に関しては,原子力安全の向上ばかりではなく,電気を生み出す信頼性向上なども含めて様々な側面があるが,本規程の「要求事項」は,その中の原子力安全に焦点を当てた要求事項を規定したものである。他方,要求事項に対する具体的実施方法については,事業者の取組に任されているが,原子力安全を達成するために,いかに実効的に実施方法を構築し,実施し,改善すればよいかについて推奨される取組方を本規程の「適用ガイド」に示した。
原子力安全を確かなものにするためには,システム構築において法令に適合するとともに,自主的な取組を織り込み,更に構築したシステムを実効的なものにすることが必須である。福島第一原発事故の経験を踏まえ,トップマネジメントをはじめ関係する全員が改めてこれを認識する必要がある。そのためにも,事業者間で取組情報を共有し,また海外の取組にも感度を高くして反映を検討することが望まれる。2020年4月以降施行されている国の検査制度においても,事業者の自主的取組がその骨格をなすものであり,本規程に基づく取組をとおして,原子力安全が更に強固なものになっていくことを望むものである。
2021年3月
原子力規格委員会
品質保証分科会
分科会長 中條 武志